2013年10月16日水曜日

手・腕が演奏に参加する

「健やかにトロンボーンを吹く」管理人の森岡です。


身体の一部分だけにフォーカスするよりも、身体全体の動きを観察した方が改善のヒントが得られることがあります。
これは単に姿勢が良いか悪いかという視点ではなく、体全体がどのように演奏に参加しているかを考えます。

姿勢が良い、悪いという判断は、結果について言っていることでそれを直接正そうとするのは強引な気がします。その結果にどのように至ったのかという過程が変わらないまま、結果だけを変えようとすると、いつも無理して矯正しているような状態になり疲れやすくなったりストレスや痛みのもとになりそうです。

例えば、譜面や演奏している手元を見るために、自分の頭や首・背中をどんなふうにしているか?
楽器のマウスピースの口をつけるために自分の頭や首・背中をどんなふうにしているか?
が、実際の演奏している指の動きや、口や舌、呼吸などに影響しています。


過去記事ですが↓も身体全体の動きを観察することが役に立った例です。



(2013年10月16日の記事です)

昨日は、関西で演奏活動をされているトランペット奏者の方とのレッスンでした。
※ご本人の了承のもと、レッスン内容を掲載しています。

レッスンの始めに、『今日はレッスンでどんなことがしたいですか?』と尋ねます。

なぜかというと楽器のレッスン、身体の正しい使い方を伝授するレッスンではありません!
やりたいことにアレクサンダーテクニークを役立ててもらうためのレッスンです。
こちらからいきなり新しいものを渡すのではなく、今あなたが持っている望みからレッスンがスタートします。
アレクサンダーのレッスンにどんな期待を持っていますか?
今改善したいと願っていること、探求したいことや興味を持っていること、悩みや行き詰りを感じていることなどなんでも構いません。

 
今回のレッスンでは、『フレーズの中に出てくる低い音から高い音への跳躍』、『リップスラー』について、より良いアイデアはないか?というレッスンになりました。



低い音から高い音への跳躍

実際に跳躍の出てくるフレーズを演奏してもらうと確かに吹きにくい様子でした。
聞いてみると『低い音を吹いてから続けて高い音を吹くとき、高い音に備えてアンブシュアを意識しすぎちゃう』『なるべくプレスをしすぎないように』というようなことを思っているとのこと。

そこで、跳躍する時に、息の量を増やすことと、マウスピースを自分の方にプレスすること(マウスピースを唇により密着させること)を提案してみると、跳躍の上の音に移行しやすくなりました。
 
音を出すためにはマウスピースと唇が密着していることが必要です。「プレスしすぎないように」という思考があることで、必要な動きに「NO!」と言ってしまい体は混乱して緊張を生みます。
今回の場合、マウスピースを唇にプレスする(くっつける)ことは、左腕の、主に肘(ひじ)の関節がやってくれることでした。息の量が増える分、マウスピースと唇の密着を積極的に維持しようというプランを加えると、フレーズ全体が明るい伸びのあるサウンドになりました。ご本人からも吹きやすいというフィードバックが得られました。


リップスラー
「リップスラーを吹くと口元が動いちゃって、吹きにくい」とおっしゃっていたので、「動かない」を目指すのではなく、「口元が動く」を出発点に考えました。
仮に「動いちゃう」ことを肯定すると、それに合わせて楽器も動かしちゃおうというプランを提案してみました。
「動いちゃう」に対して手首で楽器を固定することをやめて、楽器を持っている左手の手首を自由にしてあげて、リップスラーを吹くときのアンブシュアの変化や顎の動きに合わせて、左手の手首が楽器を動かしてくれていることを演奏しながら観察してもらいました。
これはかなり手応えがあったようで、吹いた後、グーサインをもらいました。よかった!

『高い音への跳躍』も『リップスラー』も呼吸や腕や手の使い方の意識を持つだけで、よりやりやすくなりました。
 

お互い身体の部分的なパーツにだけ集中して考えるのではなく、身体全体の動きを見ることが改善のヒントになりました。

僕自身も演奏はいつでも自分の体全体があって成り立っているものだと実感できるレッスンでした。
 

 







◆管理人プロフィール◆
 

森岡尚之 / もりおかなおゆき
 
大阪府高槻市出身。
大阪音楽大学トロンボーン専攻卒業。トロンボーンを今田孝一・呉信一各氏に師事。
2013年よりbodychance アレクサンダーテクニーク教師養成課程で学び、2015年8月ボディシンキングコーチ資格を取得。
宝塚歌劇オーケストラトロンボーン奏者/山下浩生氏の主催するトロンボーン合宿にてレッスンを行うほか、大阪で「トロンボーン奏者のための身体の使い方」1日セミナーを開催。また学校吹奏楽部への出張レッスン、音大生など音楽家との個人レッスン、アイディア音楽センターでレッスンを行っている。
bodychance認定ボディシンキングコーチ


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