2013年10月30日水曜日

吹奏楽部の部長さんとのレッスン

九月、ある学校に
レッスンに行ったときにトロンボーンの生徒が「最近とても調子が悪い。息が全然続かない。」と相談してくれました。

前のレッスンは一ヶ月前、その間彼女に何が起こったんだろう。調子が悪くなったその時に考えていたことや彼女自身に起こった出来事を思い出すお手伝いをしました。

すると彼女は自分で「九月から部長になった。部長だから今よりもっとうまくならなければいけない」と考えていたことに気づいてくれました。

そこで、「演奏する時は部長という肩書きを忘れて、バンドの1メンバーとして音楽を楽しんでもいい」ということを提案しました。
音はとても開放的な響きになり、彼女自身がラクになったとフィードバックをくれました。
...
部活の部長や、先輩になったときに、もっとうまくなりたいという気持ちは素敵です。
自分を突き動かす大きなエネルギーなりますよね。
けれどそこに義務感や責任・〜しなければという思考が加わると身体を固めてしまい思うように演奏できなくなることがあります。

部長であるため、先輩であるためにうまくなる必要はなくて、音楽が好きでもっとうまくなりたい、いい演奏をしたいと思っている彼女の本当の
望みに繋がったレッスンでした。





森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

レッスンのご依頼について

「難しい」という前提、それってホント?

久しぶりの更新になります。
ボディチャンスのアレクサンダーテクニーク教師養成コースへ入学し5か月が経ちました。

アレクサンダーテクニークのレッスンを受けることで、演奏するときに自分が無意識に行っている癖や思考のパターンに気づくことができ、それらに疑問をなげかけ、変えていくことができます。
それは、より自分を知ることでもあります。
レッスンを受け続けていると、より深い根本的な自分の考え・信念に辿りつくことがあります。
それは、表面上では、当り前になっていて普段なかなか気づくことができません。



最近ふと、そんな自分のもつ根本的な考えに疑問を持ち始めました。
その何かというと・・・

「トロンボーンを演奏することは、自分にとって難しいもの」という大前提のもと、楽器に向かっていたことでした。


この大前提があるため、こうも思っていました。
トロンボーンを演奏することは自分にとって難しい、だから人一倍頑張らなければ演奏できない。苦労しなければいけない。」そういうものなんだ。
と考えていたのです。
そしてこの「トロンボーンを演奏することは難しいから頑張らなくちゃいけない」という思考のパターンは、僕にとって「力みのスイッチ」になっていることに気がつきました。
トロンボーンを演奏しようとしたとき、これらの思考により、ギュッと体に力が入るのです。これは感覚的にはわずかなものですが、実際には演奏に大きな影響を与えていました。



僕の持っていたこの「思い込み」はなんだか漠然としています。
・なにが、難しいのか
・なにを、頑張らなければいけないのか
がはっきりしていないんです。


そこで疑問が浮かんできました。
「いったい何をそんなに難しいと思っているんだろうか」
この「自分にとってトロンボーンは難しいものである」という考えが生まれたのはいつなのか、何がきっかけかははっきりわかりません。
もしかしたら、先生から言われたことを言われたとおりにやろうとしていて、それが難しいと感じる原因なのかもしれません。







さて、「トロンボーンを演奏することは自分にとって難しい」それはホントなんでしょうか?
この問いかけに対して、ひとつ新しい答えが出ました。

「自分にできること(すでに身に付いた技術)は、簡単にできる。現時点でできないことはできない。」
かなり表現が変わりましたね!「難しい」という言葉を使っていたときは具体性に欠け、「できること」と「できないこと」を混同していました。
自分に「できること」「できないこと」がはっきりすると頭の中がとてもすっきりしました。とくに「できること」について難しく感じる必要や、難しくやる必要は全くないと思えます。


できることについて例をあげると、
・「ここからここまでの音域は演奏できる」・「このフレーズは演奏できる」
・「この速さは演奏できる」 など

金管楽器で音を出すということをさらに細かく、動きについて例えると、
楽器を持ち上げることができる。マウスピースを口につけることができる。
口を閉じることができる。息を吐くことができる。(すると息が唇を押しあけ、振動が生まれ音になる。) とてもシンプルでそれぞれの動き自体簡単ですね!


つまり、
「私は、トロンボーンを簡単に演奏できる」もホントの事実なんです!

そもそも僕の願いは、
「自由に演奏したい、ラクに楽しく演奏したい」ということです。
それなのに、それを難しくやることは矛盾していましたね。
そこで新たなプランを作ってみました!

「私は、トロンボーンを簡単に演奏する。」


そう思って、演奏してみると「力みのスイッチ」が入ることなく驚くほどすらすらと音が出ました。
それもとても心地の良い響きで・・・
そして、自由で楽しい・・・!

興味がある方はぜひぜひ試してみてください♪




森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

レッスンのご依頼について


















2013年10月16日水曜日

手・腕が演奏に参加する

「健やかにトロンボーンを吹く」管理人の森岡です。


身体の一部分だけにフォーカスするよりも、身体全体の動きを観察した方が改善のヒントが得られることがあります。
これは単に姿勢が良いか悪いかという視点ではなく、体全体がどのように演奏に参加しているかを考えます。

姿勢が良い、悪いという判断は、結果について言っていることでそれを直接正そうとするのは強引な気がします。その結果にどのように至ったのかという過程が変わらないまま、結果だけを変えようとすると、いつも無理して矯正しているような状態になり疲れやすくなったりストレスや痛みのもとになりそうです。

例えば、譜面や演奏している手元を見るために、自分の頭や首・背中をどんなふうにしているか?
楽器のマウスピースの口をつけるために自分の頭や首・背中をどんなふうにしているか?
が、実際の演奏している指の動きや、口や舌、呼吸などに影響しています。


過去記事ですが↓も身体全体の動きを観察することが役に立った例です。



(2013年10月16日の記事です)

昨日は、関西で演奏活動をされているトランペット奏者の方とのレッスンでした。
※ご本人の了承のもと、レッスン内容を掲載しています。

レッスンの始めに、『今日はレッスンでどんなことがしたいですか?』と尋ねます。

なぜかというと楽器のレッスン、身体の正しい使い方を伝授するレッスンではありません!
やりたいことにアレクサンダーテクニークを役立ててもらうためのレッスンです。
こちらからいきなり新しいものを渡すのではなく、今あなたが持っている望みからレッスンがスタートします。
アレクサンダーのレッスンにどんな期待を持っていますか?
今改善したいと願っていること、探求したいことや興味を持っていること、悩みや行き詰りを感じていることなどなんでも構いません。

 
今回のレッスンでは、『フレーズの中に出てくる低い音から高い音への跳躍』、『リップスラー』について、より良いアイデアはないか?というレッスンになりました。



低い音から高い音への跳躍

実際に跳躍の出てくるフレーズを演奏してもらうと確かに吹きにくい様子でした。
聞いてみると『低い音を吹いてから続けて高い音を吹くとき、高い音に備えてアンブシュアを意識しすぎちゃう』『なるべくプレスをしすぎないように』というようなことを思っているとのこと。

そこで、跳躍する時に、息の量を増やすことと、マウスピースを自分の方にプレスすること(マウスピースを唇により密着させること)を提案してみると、跳躍の上の音に移行しやすくなりました。
 
音を出すためにはマウスピースと唇が密着していることが必要です。「プレスしすぎないように」という思考があることで、必要な動きに「NO!」と言ってしまい体は混乱して緊張を生みます。
今回の場合、マウスピースを唇にプレスする(くっつける)ことは、左腕の、主に肘(ひじ)の関節がやってくれることでした。息の量が増える分、マウスピースと唇の密着を積極的に維持しようというプランを加えると、フレーズ全体が明るい伸びのあるサウンドになりました。ご本人からも吹きやすいというフィードバックが得られました。


リップスラー
「リップスラーを吹くと口元が動いちゃって、吹きにくい」とおっしゃっていたので、「動かない」を目指すのではなく、「口元が動く」を出発点に考えました。
仮に「動いちゃう」ことを肯定すると、それに合わせて楽器も動かしちゃおうというプランを提案してみました。
「動いちゃう」に対して手首で楽器を固定することをやめて、楽器を持っている左手の手首を自由にしてあげて、リップスラーを吹くときのアンブシュアの変化や顎の動きに合わせて、左手の手首が楽器を動かしてくれていることを演奏しながら観察してもらいました。
これはかなり手応えがあったようで、吹いた後、グーサインをもらいました。よかった!

『高い音への跳躍』も『リップスラー』も呼吸や腕や手の使い方の意識を持つだけで、よりやりやすくなりました。
 

お互い身体の部分的なパーツにだけ集中して考えるのではなく、身体全体の動きを見ることが改善のヒントになりました。

僕自身も演奏はいつでも自分の体全体があって成り立っているものだと実感できるレッスンでした。
 

 







◆管理人プロフィール◆
 

森岡尚之 / もりおかなおゆき
 
大阪府高槻市出身。
大阪音楽大学トロンボーン専攻卒業。トロンボーンを今田孝一・呉信一各氏に師事。
2013年よりbodychance アレクサンダーテクニーク教師養成課程で学び、2015年8月ボディシンキングコーチ資格を取得。
宝塚歌劇オーケストラトロンボーン奏者/山下浩生氏の主催するトロンボーン合宿にてレッスンを行うほか、大阪で「トロンボーン奏者のための身体の使い方」1日セミナーを開催。また学校吹奏楽部への出張レッスン、音大生など音楽家との個人レッスン、アイディア音楽センターでレッスンを行っている。
bodychance認定ボディシンキングコーチ


体験レッスン予約受付中です。
※個人レッスンも承っています。
◆レッスン情報◆

自分の音をちゃんと聞いたら、体の固さが消えた!

9月、ボディチャンス校長のジェレミーチのレッスンを受講しました。
8月~9月に本番が何度かあって、楽しめた本番や、またうまくいかず落ち込んでしまう本番もありました。
落ち込んだ本番の翌日から、すっごく調子が悪くなってまともに音が出ないほどになっていました。
ちょうどそんな時にジェレミーのレッスンを受けたんです。

まず、相談したことは、「自分の音を聞くのが本当に嫌になってしまって、練習もまともに続けられない。」ということ

ジェレミーから思いもよらない言葉が返ってきました。

「本当に自分の音を聞いている?」
 へ?って感じですが、実際にジェレミーの前で音階を吹いてみる


「今の演奏はどんなだった?」
『全然だめだった』という以外、何も答えられませんでした。


「何がだめだったの?具体的に言ってみて」
思い浮かんだのは、音程とか発音とかリズムとか音色とか・・・


「じゃあ、どんな音程、発音、リズム、音色だったの?どういう風にだめだったの?」
 うーん、だんだん答えに詰まってきます・・・
実際自分がどんな音程、発音、リズム、音色で演奏したのか思い出せないんです。
頭に浮かんでくるのは、『今の演奏に対する自分の感想』ではなくて、ふだん指摘されていることや気をつけていることばかり
そう、自分が演奏している時、実際にどんな音が鳴っているのか聞いてなかったんです!


「そう、今まで自分の音を聞いてあげてなかったんだね。もし、実際の音を聞かずに理想を追い求めてるとしたら、それは幻想だよ。」
この言葉を聞いて、レッスン中に思わず泣いていました。
何か今までずっと自分を苦しめていたものから開放されたような安心感と、自分に対してなんてひどいことをしていたんや!っていう悲しさで。


「自分の音を聞かない他に、今まで何をしていたか知ってる?」
・・・・・・・・・


「自分の演奏に対して、いつもダメだダメだって批判していたんだよ!」
!!!!


「だめだって批判は具体的じゃないよね。批判しない代わりに、実際の自分の演奏がどんななのかを聞いてみよう。聞く能力を使おう。」
自分の演奏プランに『実際に鳴っている音を聞く』というプランを加えて演奏してみると、今まで演奏するときに常にあり続けた不安や緊張が激減しました。


人から批判されると、萎縮したり固まったり怖くなったり自信がなくなったりしますよね。身体は緊張して固くなってしまいます。
それと同じことを自分が自分自身に対してやっていたんです。
吹けばそれを自分で否定して、でも練習しなくちゃいけないと思ってるから体に吹けと命令する。そして吹けばまたそれを否定する。これでは練習が続けられないのも無理はありません。

だから、自分の演奏を批判するよりも、ちゃんと聞いてあげて実際にどんな音が聞こえるか知る方が『うまくなる』につながるんだと思います。



今は自分の演奏プランに『実際に鳴っている音を聞く』というのを意識的に取り入れています。意識が『音』に向けられるので、より演奏する目的も明確になって、呼吸や舌や顎など、演奏に必要な体の動きがよりシンプルに、より機能的になりました(^^)





森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
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2013年10月8日火曜日

演奏家のための「体の地図作り」

アレクサンダーテクニーク教師養成学校『BODYCHANCE』で僕がどんなことをどんなふうに学んでいるのかを紹介してみたいと思います。

現在僕はBODYCHANCEの教師養成課程で三つのクラスを受講しています。
そのうちのひとつに、「Body Thinkingボディシンキング」というクラスがあります。

「体、考える」って・・・どんなクラスかというと、
アレクサンダー・テクニークの考え方にもとづきながら、体の構造と動きについて学びます。単なる解剖学の知識だけでなく、それを自分自身の体にあてはめることに重点を置いて学びます。
(BODYCHANCEのホームページより引用)


上記のように、クラスは筋肉の名前や骨格の名前を教科書を見ながら覚える、知識を得るという授業ではありません。
実際の体の構造や動きを知ることで、自分の持っている誤った認識に基づいた体の使い方にはっきりと気づき、その認識と使い方を変えていく、というものです。
これを「ボディマッピング」(体の地図作り)と呼びます。
では、このボディマッピングが「演奏とその上達」にどう関係しているのでしょうか。


認識の違いが、痛みや不要な緊張を生んだり、上達を阻んでいる

呼吸に関していくつか例をあげてみます。


「息はお腹に入る?」
-いいえ、お腹には入りません。肺に入ります。「息をお腹に入れて」という話を聞いたことがありますが(実際に僕もそう教わり実践しようとしていました)、お腹に息が入るという「認識」を持ち、お腹に息を入れようとすると、胸のあたりが圧迫されて、上手く吸えず苦しくなった経験があります。では、「息は肺に入るので、その周りの肋骨は広がります。その結果、肩も少しあがるでしょう。それでいいんだ」、と思ってみてください。息の吸い方や吸う量はどうなりますか?


 


 
胸部のX線写真です。肋骨の中の黒い部分が肺です。鎖骨より上まであるんですね!肺と心臓の下に横隔膜と呼ばれるドーム上の筋肉の膜があります。横隔膜により胴体の上部(肺と心臓)と下部(その他の内臓)を分かれています


「腹筋を使うのは、吸う時?吐くとき?」
-「お腹を使って」「腹筋を使って」というのは、吸う時なのか吐くときなのか、それとも両方なのかどうなんでしょう。腹筋が働くのは「吐く」ときです。吸うときには必要ありません。また息を吸う時は肺のスペースを広げるために横隔膜という筋肉の膜が下に下がります。すると横隔膜の下にある内臓も一緒に下に下がっていきます。この時に腹筋に力を入れていると、横隔膜と内臓が下に下がる(肺のスペースを広げるための)動きを邪魔してしまいます。なので吸う時は「腹筋の仕事はOFF。休めてあげよう。」と思ってみてください。息の吸い方や吸う量はどうなりますか?


「息の通り道は、どのあたり?」
-「息は首の後ろの方を通る」という指導を聞いたことがあります。実際には息の通り道「気管」は、背骨・食道の前にあります!首のかなり前側ですね。では、「息の通る道は、首の前の方にあるんだ」と思って吸ったり吐いたりしてみてください。呼吸に変化はありますか?


上記のことを試してみて、呼吸がしやすくなった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
このように認識が変わることで、これまでうまくいかなったことが、すぐに改善されることがあります。
以前の僕は、その「うまくいかないこと」に対して、ひたすら練習するという方法を選択していました。しかし、練習すればするほど改善されるどころか、痛みがひどくなったり、逆にうまくいかなくなってしまうことも多くありました。
それは、自分の体について誤った認識を持ったまま練習し続けた結果とも言えます。
「楽器の練習」というと、実際には楽器を演奏している自分自身の動きの練習とも考えられます。
呼吸、姿勢、唇、顎、舌、お腹、指の動きなどを多くの人が意識していますよね。
けれど「どこをどうやって意識すればいいのか」「実際の体はどうなっているのか」という情報はなかなか得ることができません。
この二つがあいまいなまま、意識しようとすると、あまり効果が得られない・以前より吹きにくくなるということがあります。


「ボディマッピング」は、自分自身の体についての意識をより明確に、正確にして使えるようにする技術です。
アレクサンダー教師養成課程の中では、「教える」練習を始める前に、自分の体についての意識を2年かけて洗練させていきます。僕は今その段階にいます。

このブログでは、僕自身の演奏するときの「どこをどうやって意識する?」「実際の体はどうなっているの?」という疑問を、明確に正確に洗練させていく過程で得た情報や学びをシェアしていきます。


また、この教師養成課程で学んだことを、取り入れたレッスンを10月始めました。
レッスンの問い合わせはこちらからお願い致します。
レッスンのご依頼について



森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い








 






























2013年10月5日土曜日

プロフィール

 

<プロフィール>

 





森岡 尚之 / もりおか なおゆき



1990年生まれ。大阪府高槻市出身。


トロンボーン吹くことをはじめ音楽活動や、
その中で知った「アレクサンダーテクニーク」の
レッスンをしています。



【経歴】
大阪音楽大学卒業。
トロンボーンを今田孝一、呉信一の各氏に師事。

BODYCHANCE教師養成コースで学び、
現在アレクサンダーテクニーク教師実習生として
活動中。


 




2013年10月3日木曜日

再び心が燃え始める~挫折からアレクサンダーテクニークとの出会い~

僕は、自分のトロンボーン演奏と、トロンボーン&金管楽器のレッスン、吹奏楽での合奏指導にアレクサンダーテクニークを取り入れています。
今回は、僕のこれまでの音大卒業当時の話と、それからアレクサンダーテクニークとの出会い、これから目指すものについてお話させて頂きます。


《音大での挫折》
中学の頃からずっと夢見て入った音楽大学を卒業する時のこと、『もう音楽は続けられない、精神的にも肉体的にも完全にまいってしまった。』音楽を嫌いになりたくないけど、苦しい。楽器のことを考えるだけで胸が詰まったように息苦しくなって、吹けば背中と腰が痛く、練習の終わりや本番後にはひどい頭痛と肩こりがやってくる。自分にひどい嫌悪感を持っていて、音を出すことすら苦痛・・・練習もまともにできなくなり、卒業試験の演奏は散々なものでした。
昔は心からトロンボーンが好きだったのに、どうしてこうなってしまったんだろう。なにがいけなかったんだろう。音楽を辞めなら生きる価値を何に見いだせばいいんだろうか。
大学を卒業してから、一歩も前に歩み出せずに、そんなことを考える日々が続きました。

けれどいくら考えてもこれまでの自分の行いをただ責めるばかりで、答えは出ませんでした。
どうして、トロンボーンを演奏しようとすると、体が痛くなってしまうのか、心が苦しくなって不快になるのか当時は本当にわかりませんでした
そして自分にとって重要なのは、どうすればトロンボーンを続けていけるのか、でした。
このままでは心も体も根をあげて、音楽が嫌いになってしまう一歩手前だったのです。

 
《アレクサンダーテクニークとの出会い》
大学を卒業してから一年間、なんとかトロンボーンを続けれるよう試行錯誤を繰り返していました。姿勢や呼吸について色んな書籍を読んだりエクササイズを試したり、奏法についても改めて見直してみたり。しかしどれも根本的な解決には至らず、唯一卒業してから自分で企画して臨んだ演奏会でも、途中で音が全く出なくなってしまい、心が折れかけていました。
 
そんな時、たまたま東京藝術大学でアレクサンダーテクニークの講師をされているバジル・クリッツァーさんのブログを見つけました。そこには、今まで色んな情報に溢れて混乱していた金管楽器の奏法について、体の実際の構造に基づいた、とてもスッキリとして具体的なアイデア、自分の考えやメンタル的な部分が体の痛みと演奏に直接影響を与えているということなど興味深い内容ばかりが目に飛び込んできました。その日から、バジルさんのブログを読んでは、練習する。の繰り返しでした。

 
すると、練習し始めて数分の間、体の痛みがなくなって、呼吸が自由になり久しぶりに自分が吹きたいように吹けたんです!いったいこのアレクサンダーテクニークってなんなんだろう?もしかしたら、もう一度トロンボーンが吹けるかもしれない・・・!!音楽が好きになるかも!という希望が湧いてきました。
そして、このアレクサンダーテクニークというやつに賭けてみよう。これでダメだったら楽器はやめよう。
本当にわらにもすがる思いでした。
 
さっそく大阪梅田にあるBODYCHANCEというアレクサンダーテクニークのスタジオへ体験レッスンを受けにいきました。そこでは、自分の体について今まで間違った認識を持っていたことに気づかせてもらい、先生にサポートしてもらいながら、新しい意識で楽器を吹いてみると・・・すっと今まで聞いたことのないような、遠い昔に聞き覚えのあるような音が出てきました。自然に出てきた豊かで響きのある音・・・これが素直にでた僕の音なんだ・・・!
 
 
それから、しばらくして発表会に出ないかというお誘いがあり、ソロの演奏をすることになりました。
めちゃめちゃあがりまくったけど、レッスンで教わったことや、バジルさんのブログで読んだことで、そのときできそうなことをとにかく実践してみました。演奏はミスばっかりでぼろぼろ・・・だったかも知れない、けれど僕にとっては今までにない初めての体験でした。
それは何かというと、どれだけあがっても、ミスをしても、アレクサンダーテクニーク的なアプローチを使うことで、自分のやりたい音楽を最後まで意図し続けられたんです。いつもはあがりに対する恐怖心や、ミスしたときの動揺、人からの評価、ネガティブな思考が常に自分のやりたい音楽の邪魔をしていたけれど、このときはそれらに邪魔されず、本当に自分の音楽を最後まで考えることができました!!これはとても楽しく喜ばしい体験でした。そうだ、これが自分がやりたいこと!うん、トロンボーンを続けていきたい、続けていける!と確信しました。
再び心が燃え始めるのを感じました。

 
 
 
《教えること》
そんな素敵な体験をした後すぐ、母校の高校へレッスンに行ったとき、あるトランペットパートの生徒との出会いがありました。彼女は二年間、真剣に打ち込んだ吹奏楽部の最後の定期演奏会でソロパートを演奏するようでした。合奏練習でたまたま彼女のソロパートを聞いたのですが、緊張して音がまるで出ない。練習が終わってから彼女に少し声をかけました、小声で「すいません。すいません。」というばかり。それから高校に行くたびに彼女と話をするようになり、すこしずつ望みや悩みを話してくれました。「(部活の)みんなに
迷惑かけてる」「自分はへたくそだからソロなんて吹けない」とネガティブな話ばかり、けど幸いにも「吹けるようになりたい」「吹きたい」という意思が感じ取れました。自分と似てる、それなら役に立てるかも!
それから彼女の演奏を見て、話を聞いて、自分の経験とバジルさんのブログを頼りに少しずつアドバイスをしていくと、だんだん音が出てくるようになってきたんです。そして出てきた音はすごく綺麗な音!
そして音が出るようになるにつれて彼女の印象がどんどん変わっていきました、実際とても明るく好奇心旺盛な生徒だったんです。だんだん彼女のほうから、「これはどうやったら吹けますか?」「いつもこれがうまくいかないんですけど、どうすればいいですか?」ってとてもキラキラした目で聞いてくる。ついこの前までとは見違えるくらい楽器と部活を楽しんでいました。これまた僕にとって素敵な体験でした。
 
自分が今まで苦しんできた経験、そしてアレクサンダーテクニークを使ってそこから健全に自分の好きな音楽を楽しみ上手くなっていく過程が、誰かの役に立つのかもしれない・・・!
それって自分にとってなんて素晴らしいことなんだろうか!!
 

《音楽家のためのアレクサンダーテクニーク教師を目指す》
そんな経緯を経て、現在アレクサンダーテクニーク教師を目指しています!
アレクサンダーテクニークに魅力を感じるのは、
 
・アレクサンダーテクニークを使うことで、ネガティブな思考や評価に邪魔されず、本番で自分のやりたい音楽に集中し続けられること こころから音楽を楽しめること 
 
・自分自身の力で自分の可能性を引き出し、伸ばしていけること
 
・肯定的、前向きなエネルギーを源に上手くなっていけること
 
です。そしてその方法を伝えられる教師になりたいと思っています。
そしてプロアマ問わずパフォーマンスする全ての人々が、その才能を惜しみなく発揮できて、どこへ行っても個性溢れる豊かな音楽を楽しむことができる日本に、なればいいなあと、本気で夢見ています(!!)
 







森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

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