2014年8月28日木曜日

息を積極的に使うことと、目的

8月23〜25日、滋賀県マキノで開催された山下浩生先生のトロンボーン合宿に参加してきました。


僕にとっては大学を卒業してから、トロンボーンの演奏を見て頂ける貴重な機会です!それにたくさんのトロンボーン吹きの方々の演奏が聴けたり、一緒に吹かせて頂いたりでとても刺激的な合宿でした(^-^)

昨年に引き続き、アレクサンダーテクニーク教師のバジルクリッツァーさん、さらに今年はアレクサンダーテクニーク教師の山口裕介さん、ステージメンタルカウンセラーの大村まりさんの講座を受講することができ、とても充実した3日間でした!


とくに今回の合宿で気づいたことが、人前で演奏するときや、アンサンブルの中で吹くとき、レッスンで吹くときに、どうも調子が悪くなってしまうことについて。


とんでもなく緊張しているわけではないのに、音が出しづらくなってしまったりするのです。


バジルさんのレッスンを、見学してる方達の前で受講したときも、同じことが起こりました。

そのときは「緊張で硬くなってるのかなあ。力みすぎてるのかなあ。」なんて考えてましたが、



バジルさんからは、

「楽器を持ちあげる動きも、スライドを右手でつまむことも、スライドを動かすことも、マウスピースを口にくっつけることも、アンブシュアも、息を吐くことも、タンギングも全部積極的にやってみて」と。

そこで、そのそれぞれの動作、つまりトロンボーンを演奏することを積極的に力を使ってやってみると、だんだんと音が安定してくるようになりました。


自分の中では、音が出づらくなるのは、力の入り過ぎが原因だと思っていたので、余計な力を抜くことばかり考えていました。
けれどバジルさんの提案のように、より積極的に力を使う(必要な動作を明確に行う)ことで、調子が良くなっていったのでした。



その後のアンサンブルの練習で、さっそく試してみようとしましたが、なかなかうまくいきません。

どうしてだろう…


頭の中では一つ一つの動作を積極的にやろうと考えていても、実際に吹くときに消極的になってしまうのです。特に息を吐くとき、タンギング、スライドを動かすときに顕著でした。


まだその新しいやり方に慣れていないからそうなってしまうんだろうか。
でも1人で練習しているときはうまくいきます。

では、なぜ人前やアンサンブルの中だと、演奏のための動作が消極的になってしまうのか。

それは、そのとき自分の考えにある目的・望みと、用意した新しいプラン(やり方)が合ってなかったのだと思います。


アンサンブルの中で吹くとき、「間違えないように」「外さないように」「迷惑をかけないように」といった考えが強くありました。

演奏中に「間違える」「音を外す」「足を引っ張っている」という自分にとって嫌な事態を避けようと思えば、最終的には「吹かない。アンサンブルのメンバーから抜ける。」という手段があることに気づきました。

当たり前ですが吹かなければ、間違えることも外すこともありません。


おそらく、これらの考えが強いきっかけになり、レッスンで得た新しいプラン(演奏するために必要な動作を積極的に行うこと)とは反対に、演奏を消極的なものにさせていたのだと思います。


では、楽器を吹きたくないのかといえば、そうではありません。
楽器が吹きたくて合宿に参加したわけで、アンサンブルもしたくて参加したんです。


演奏したいという思いがあるんだから、新しいプランはそっちにつなげてやればいいじゃないかと考えました。


そこで、改めてアンサンブルの楽譜を眺めて、周りで鳴っている音を聴いて、演奏しているメンバーを見て、そうしていると、ふとその曲がすごく好きな曲であることと、トロンボーンのアンサンブルが好きなことを思い出しワクワクし始めました。

自分もこのメンバーの中で演奏するために、「楽器を持ち上げることも、アンブシュアも、息を吐くことも、タンギングも、スライドの操作も全部積極的にやろう」と思って演奏すると、さっきよりも自分の思ってるタイミングできれいに発音できる箇所が増えました。
とくに空気がより積極的に動くようになったのがわかりました。



ボディチャンスのアレクサンダーテクニークレッスンでは、自分が何をやりたいのか、という部分がとても大切なのですが、それを改めて実感しました。






森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ
トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い













































2014年8月12日火曜日

うまくなるために、選択する


ボディチャンスでアレクサンダーテクニークを学びはじめて1年が経ちました。


1年前のぼくは、長らく苦しんでいたあがり症やトロンボーン演奏の不調を乗り越えるためにアレクサンダーテクニークを学びはじめました。


長い間解決できなかった不調もだんだんと良い方向にむかい、あがり症についても、以前よりステージ上で自分の力を出すことが少しできるようになってきました。


しかし、だんだん良い方向へ向かっている実感があるにも関わらず、演奏がボロボロになってしまう本番、リハーサル、状況もあります。


どうもアレクサンダーテクニークを学ぶ中で、演奏にいい影響をもたらしてくれたアイデア・考え方・取り組み方と、自分が演奏という行為をするために必要だと信じている考え方・取り組み方に大きな違いがあるように感じます。


それは、
・人前で演奏するなら、努力しなきゃいけない。でないと聴いてくれる人達に失礼だ。できないところがあるなら、聴いてもらう価値がない。という考え。


だから、できるまで練習しなきゃならない。できないなら自分のやっていることに価値はない。

そう信じて、今まで練習に励んできた。



練習をいくら繰り返しても、思うように上達せず、それは努力が足りないからだと、さらに自分のできないところを指摘して、練習を繰り返す…
そうしていれば、いつか努力が報われてできるようになるんだと信じていました。


けれど、その結果は、ちっともうまくはならず、それどころかどんどん調子を崩して、体を痛めて、演奏するということが人前で自分のできないところを晒す苦痛の時間となってしまい、自信を失って演奏する意欲も削がれてしまいました…。

結局、努力が足りてない、自分には根性がないんだ、だから上手くなれないんだ。と思っていました。


でも待てよ?
今までの取り組み方や考え方は、そもそも楽器の上達を促してくれているか?

一向に上達しないのは、本当に努力が足りないからなのか?

じゃあもう諦めるしかない?


僕は、これからも楽器を続けたいし、上手くもなりたい。そして
演奏したい曲もたくさんある。


自分の望む演奏に近づくためには、何をすればいいんだろう。


これまでの自分にとっての努力のやり方、自分に対して批判的な厳しさは、うまくなることに繋がりませんでした。


アレクサンダーテクニークを学ぶ中で、上達を促してくれたのは、

・演奏することが、自分にとってどんな意味を持つのか明確になること

・自分のやっていること(できないところも含めて)に興味をもつこと

・そして、自分に協力的になること

これは、今までぼくが演奏・上達に不可欠だと信じていたこととは、大きく違います。
でも、確かに自分の望む方向へと進んでいけるのはこっち。
だったら、今まで信じてきたけれど役には立っていなかったルールを外して、どうやって取り組んで行くか新たに選択していけばいいんじゃないか!


そう思ったら、今まで自分が信じてきたことより、現実的で建設的な素晴らしい考え方を実践している人達・それを教えている人達がいることに気がついた。

ぼくにとっては、アレクサンダーテクニークがそのひとつ。


一変に変えられるわけじゃないけれど
これまでの演奏とその上達への取り組み方が、自分の中で少しずつ、大きく変わろうとしています。







ブログの更新がかなり久々になってしまいました。
これからまた、健やかにトロンボーン演奏を上達していくために、学びを重ね、ブログの方も更新していきますので、読んで頂けたら嬉しいです。



森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ
トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
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アレクサンダーテクニークとの出会い

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2014年8月9日土曜日

ルシア先生とのレッスン



アレクサンダーテクニークを学び始めて一年と少しが経ちました。

そのなかでの学びは、今の自分の音楽活動にとても役立っています。
中でも、とても嬉しいのが、楽器や音楽に対する興味・好奇心・意欲が自然に沸いてくるようになったことです。

というのも、僕は2年前、音楽大学を卒業するころ、音がまともに出なくなるまでの激しい不調に悩みました。リハーサルや本番で恥をかきたくない、失敗したくないという思いが強くなり、今までできていたことまでできなくなってしまうという悪循環を引き起こしました。
ちょうど大学を卒業する直前、演奏家としての道を歩みたいと思っていた時期だったので、大変ショックでした。

卒業して、「今までと同じ頑張り方では、これ以上の上達は望めないしとても楽器を続けられない」と感じたぼくは、しばらく楽器の練習を休むことを決意しました。

しかし、その決意とは反対に、楽器を練習しない自分を心の中で責め続けていました。
休むことを実行していたけれど、認められていなかったんです。


やがて、「練習しなきゃダメだぞ。」という心の声に突き動かされ、練習を再開するようになりました。
休んでいたことで、凝り固まっていた身体の緊張はいくらか緩和されていたので、最初の方は以前よりラクに音がなりますが、やがてまた身体が緊張し音が鳴らなくなる状態まで戻ってしまいました。


それから1年後、アレクサンダーテクニークと出会い、それ以降BODYCHANCE でレッスンを受け続けています。

自分の持つ様々な思考が、身体の緊張を引き起こしたり、また自由にしてくれることを体験しながら学び、実際に長く苦しんでいた不調からだんだんといい方向へ向かい始めました。

確かにいい方向へと向かってはいたのですが、不調になる以前の、気持ちよく吹けていたころのような、「演奏する気持ちよさ、心地よさ、楽しさ」を感じることがありませんでした…




今年の5月、来日していたアレクサンダーテクニーク教師ルシア・ウォーカー先生のクラスの中で聞いた言葉が印象に残りました。

「自然に湧き上がった衝動から生まれた動きは美しい。それは人が本当にやりたいことをやることが美しいということなのかもしれない。」


その言葉を聞いた僕は、「自分は本当に吹きたくて楽器を続けているんだろうか?」と疑問に思いました。
それは僕が「練習しなくちゃいけない」という思考の中で、楽器と向き合い続けてきたからです。

そこで、ルシア先生に、
「自分が楽器を吹きたいと思う衝動が沸いてくるのを待ってみたい。そのためにルシア先生のサポートを受けたい」ということを相談しました。

幸いに、ルシア先生のクラスは3日間続けてあるので、
「わかったわ。それは時間をかけて探究しましょう。3日間のいつでも、何か衝動が沸いてきたら声をかけて」と快く引き受けてくださいました。


いつもだったらクラスの中で楽器演奏をレッスンしてもらいますが、この日は吹きたいという衝動を待ちながら、他の人のレッスンを聴講していました。


クラスが終わってから、いいようのない不安に駆られました。
「この3日間、楽器を吹きたいとみじんも思わなかったらどうしよう。」
今まで練習しなきゃいけないという思考をモチベーションとしていたところが大きかったので、それがなくなった自分は楽器を吹きたいのかどうか…不安と悲しさがどっと押し寄せてきました。

三日目、ルシア先生のクラスの最後の日。
僕は、楽器を吹きたいという衝動が起こらなかったことを話しました。

「ちょっとここで、楽器を出してみない?吹くか吹かないかは決めなくていいから。」とルシア先生。

ルシア先生のサポートを受けながら、まるで初めてトロンボーンという楽器に出会うように、楽器を眺め、手に取り、重さを感じて、また細部から全体を眺めます。

ケースを開けて楽器を組み立てて、音を鳴らすまで、こんなに長い時間かけたことがないくらい、ゆっくりとトロンボーンを感じ、眺めました。


そして楽器を吹きたいと思っていないことを認めるのを恐れている自分に気がつき、涙が出てきました。


「手放すことができたら、その吹きたいという衝動はやがて帰ってくる」
ルシア先生のその言葉に励まされ、2年前にやろうとしてできなかった、「楽器を吹かなくても、練習しなくてもいいんだ。」ということを自分に許すことができました。


それからの一ヶ月間、生活のなかで様々な変化が起こりました!

クラシックやトロンボーン、吹奏楽の演奏が聴きたくなり、演奏会に足を運んだり、CDを購入したり。
また吹奏楽を演奏したくなって、地元の吹奏楽団に入団することになったりと、心から音楽をやりたいという衝動が起こり始めたのです。

そして楽器を演奏したいという衝動にいろんな種類があることに気がついたのです。

今日はこの曲を演奏したい。このコンチェルトにチャレンジしてみたい。こういうところをもっとうまくなりたいなどなど。

そうするとその衝動によって、演奏する曲や練習の内容は様々です。


今まで僕は、本番以外の日=練習=うまくならなきゃいけない時間と考えていました。
しかし、それではやがて疲れてしまいモチベーションは長続きしません。
それに楽器を続けているのは、演奏することが好きだからです。
本番でなくても、演奏することを楽しむ時間があっていいですよね!

そして、今日は楽器を吹かないでいいや!という選択肢があることも!

それに気がついたおかけで、音楽が自分のなかでどれだけ大切な存在かを、思い出すことができました。


アレクサンダーテクニークを学び始めるとき、ぼくの第一の目標は、心身ともに健やかにトロンボーンを演奏し続けることでした。
その目標がようやく実感となって現れ始めているように感じます。

そしてこれからも、続けていこうと思います。



◆プロフィール◆
 

森岡尚之 / もりおかなおゆき
 
大阪府高槻市出身。
大阪音楽大学トロンボーン専攻卒業。トロンボーンを今田孝一・呉信一各氏に師事。
2013年よりbodychance アレクサンダーテクニーク教師養成課程で学び、2015年8月ボディシンキングコーチ資格を取得。
宝塚歌劇オーケストラトロンボーン奏者/山下浩生氏の主催するトロンボーン合宿にてレッスンを行うほか、大阪で「トロンボーン奏者のための身体の使い方」1日セミナーを開催。また学校吹奏楽部への出張レッスン、音大生など音楽家との個人レッスン、アイディア音楽センターでレッスンを行っている。
bodychance認定ボディシンキングコーチ


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