2013年12月26日木曜日

音を支えているのは、体の「動き」

吹奏楽や管楽器指導のなかで「音を支える」という表現をよく耳にします。
一定の音色・音量・音程・響きを保持するために「支える」という表現が使われているように思います。


「支える」という言葉にどんなイメージを持ちますか?
僕は、建物の土台とか、「がっちりした・固定的な・動かない」ものを連想します。
「支える」という表現は、イメージとしてわかりやすい反面、「固定的で動かない土台」というイメージを奏法に持ち込んでしまう可能性もあると思います。


「音を支えること」ができているかどうか、どのように判断しますか?
僕の解釈ですが、上に書いたように、一定の音色・音量・音程・響きが保持されていれば、安定した「支えられた音」と認識できると思います。
つまり、判断基準は「音」で、「支えようとしている」体の感覚ではありません。

音を支えるために、
おなかに力を入れて、固めようとしていませんか?
・脚が固まっていませんか?
・アンブシュアと楽器の関係がぶれないために、頭や首を固めていませんか?
・体が動かないように、と思っていませんか?

これらのことは、「音を支えようと体が頑張っている感覚」は得ることができますが、音を支えるためには、必要ありません。
このやり方で、音を支えられているとしても、音色や響き、演奏の自由度、音量の幅は制限されている可能性が高いです。


では、「音を支える」にはどうすればいいのでしょう。






バランスをとるために体は動いている
私たちがバランスよく立っていられるのは、体が微細に動き続け調整してくれているからだそうです。
・試しに立って両手を前にのばしてみてください。そして腕をふりまわしたりいろいろな方向に動かしてみてください。
別に不思議なことではありませんが、バランスを崩すことなくそのまま立っていられますよね。日常生活の中でも私たちはいろいろな動きや姿勢になりますが、特に何か意識しなくたって立っていられます。

・今度は脚を固めて(膝を張り、股関節・足首をロックする感じで)、両手を前にのばし、腕をふりまわしたり、いろいろな方向に動かしてみてください。
手を前にのばしたとき、体がほんの少し前に傾きませんか?腕を動かし始めると、さっきよりも足下が不安定になりませんか?
本当に微動だにしない「物」であれば、手が前に出るとそのまま前方向に傾いて倒れますよね。

私たちは無意識に起きている微細な動きによってバランスをとり、自分の体を支えています。
支えるために「固定しよう」とすると、体はその指令に従い、逆にバランスが取りづらく支えにくくなるんです。
演奏する時も普段立っている時も脚を固めることは必要ありません。むしろ自由に動ける方が、より思い切った表現をするときにも、対応しバランスを取って支えてくれます。





音を支える息について。
管楽器で音を出すためには、息を吐くことが必要ですね。
管楽器演奏の場合、息を吐く量は普段の呼吸よりも多くなるので、腹筋や骨盤底筋が働きます。
一定の音量で保つ(音を支える)ためには、一定の量の息を吐き続けることになります。
息を吐くときの腹筋の役割は、吸った時に横隔膜の働きで押し下げられた内臓を、上に押し戻すことです。
その時、腹筋を固定して支えようとすると、息を吐くという動きを止めてしまいます。
腹筋が動き続けるから、一定の量の息を吐き続けることができるんです
そして息を吐き続けることで音は支えられています。




アンブシュアとマウスピースの関係も、曲を演奏していれば変化し続けます。
必要なのは、音を奏でている間、密着し続けていることです。
唇と楽器をその場所に固定させることではありません。
演奏中に、自然に起こる頭や顎・アンブシュアの動きの変化に合わせて、唇とマウスピースを密着させ続けていたい、そのために楽器を持つ手・腕が唇方向にマウスピースをくっつけ続けます。

今説明した以外にも、たくさんの動きによって演奏が成り立っています。
それらの動きが音を支えています。




なので音を支えるために
頭と首は固めてなくていい、動けるようにしてあげよう。
・体も固めてなくていい、動けるようにしてあげよう。
・脚は、微細にバランスをとれるよう動けるようにしてあげよう。
・息を吐き続けよう、そのために腹筋は動いているんだ


そして、好きなだけ動いていいんだ
と思って演奏してみてください。



森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ
トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

レッスンのご依頼について






















2013年12月10日火曜日

楽器の構えを、ラクに

僕は楽器を吹き続けていると、楽器を持っている手に力が入って疲れたり痛くなることがよくあります。また、学校の吹奏楽部などへ指導へ行くと、同様の悩みを持っていたり、無意識のうちに楽器を強くぎゅっと握っている生徒さんをよく見かけます。


楽器を持つためにどれくらいの力加減で持っているか、考えたことはありますか?
手や腕に力が入りすぎているという実感を持っている方は少なくないかもしれません。
楽器を持ち上げて、歌口(マウスピース)を口に持ってくるという動きは、演奏するために必要不可欠な動きです。
つまりブレスやアンブシュア、タンギングについて考えるのと同じくらい、考える価値のあることだと思うんです!



楽器をどれくらいの力で持つか考えてみる


手元にペンや紙(落としても大丈夫なもの)があれば試してみてください。

①片手でそれを持ちます。
②そして、それが手を離れて(机か床、もしくはもう片方の手のひら)に落ちるまで、ゆっくりと持っている手を緩めていってください。
③持っていたものが落ちたら、また同じほうの手でそれを持ちます。
④今度は、それが手を離れて落ちる手前まで、ゆっくりと持っている手を緩めてください。

落ちる手前までなので、今度は落ちませんね。
ということは、最初よりも手を緩めていても、それを持ち続けられるのです。
「持つ」ための力加減に自由な選択肢があることがわかりました。

さて、では楽器をどうやって持ちましょう。
必要な条件としては、楽器が手を離れて落ちなければ十分だと考えます。
楽器を手に取り、手をおろした状態でその楽器の重さを感じて見ましょう。

私たちは物を持つとき、無意識に持つ前から、持つために必要な力を推測し準備しています。
人のかばんや、中身のわからないダンボールが思いのほか重くて(軽くて)びっくりした経験はありませんか?それは、そのものの見た目や自分の経験から勝手に重さを推測しているからです。
普段から手にしている楽器ならなおさら習慣的に、持つための力を準備しています。

けれど力は必要になるときに、必要な分使えばいいのです。
持つ前から、持つために力を入れる必要はありません。

なので、まず楽器の重さを感じて、それを持ち続けるために必要な力で持ってみてください。
(楽器が手を離れ、床に落ちなければOKです!)
思いのほか力を使ってないという感覚があるかもしれません!


そして自分の口まで持ってくるのは、腕の動き

手で楽器をもつところまで説明しました。次は楽器の歌口(マウスピース)を自分の口まで持ってくるという、「楽器を持ち上げる」動きについて。

楽器を持ち上げるとき、肘(ひじ)が大活躍します!!
実はこの肘、案外忘れがちになることが多いようです。
手をおろしているところから、肘だけを折りたたむように曲げてみるとそれだけで胸のあたりまで手が届きます。楽器を口まで持ってくるという仕事の大部分を担っています。
もちろん楽器を持ち上げ、マウスピースを口まで持ってくるには、腕全体が動きます。
ちなみに腕全体というのは、鎖骨・肩甲骨も含まれます。なので肩のあたりも動きますよ!

なので楽器の歌口(マウスピース)を口まで持ってくるために、
手は必要な力(楽器を落とさない程度)で楽器を持ち続けていて、
マウスピースが口に向かうために肘が曲がって腕全体のサポートがあって、
マウスピースが自分の口までやってくるんです。そしてそのおかげで音を出すことができます。

↑少し変わった言い回しに聞こえるかも知れませんが、あえて楽器を持ち上げる目的と動きの順番を明確にしています。



最後に補足として強調したいポイントは、
自分の口マウスピース持ってくるということです。
楽器を構える過程で、自分の顔を楽器のほうにやっているかもしれません。
すると顔(頭)が楽器にのしかかることになり、その重さは自分の手・腕で受け止めることになります。これは手や腕にかなり負担がかかります。持っている楽器にさらに重さが加わるので、手に力が入る(ぎゅっと強くにぎる)原因にもなりやすいです。
なので、自分の口マウスピース持ってきましょう。それがさきほど説明した腕の仕事なんですね。


それでも長時間演奏を続けていると、疲れてくるのは自然なことです。
そのときはしっかり休みましょう。演奏中でも、こまめに楽器を降ろして、腕を休ませましょうね!






森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ
トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

レッスンのご依頼について












2013年12月1日日曜日

練習の評価の仕方

楽器の練習をしている時、自分の演奏をどんなふうに評価していますか?

以前の僕は、「結果」のみを基準に評価していました。
音が外れた⇒「ダメ」
音程が悪い⇒「ダメ」
というふうに。
この「ダメ」という評価がどこに向けられていたかというと「自分」です。
・音を外してしまう「自分」がダメ。
・音程が悪い「自分」がダメ。という評価をしていました。

その反面、「結果」ばかり意識しているので、
自分に無理のある奏法でとっさに「音をあてる」「音程を合わす」ということをしていました。
これは本番やリハーサルでは役に立つことがありますが、いってみれば緊急策のようなものです。
しかし、練習の時から「結果」だけで評価し、この緊急策をつかうことはどうでしょうか?
無理な奏法を何度も反復し、それが癖として身について、体を痛めてしまう可能性があります。
それにこういった練習の仕方はいまいち効果が得にくく、いつまでも自分の実力や技術に信頼を持てないのではないかと思います。



では、何を評価基準として練習していけばいいのでしょうか。
「自分がこうする/こうしたいと決めたプランを実行したかどうか」で判断してみると、どうでしょうか?

たとえば、練習が必要と思われる低い音から高い音への跳躍に出会ったとします。
いつも通り演奏すると上の音がうまくあたらず、下の音にはずれてしまいます。
そこで部分的な練習を始めます。
まず、その跳躍を演奏するためにどんなアイデアやプランがあるだろう?
考えたり、いままで教わってきたことを思い出せば、アイデアがいくつか出てくるかもしれませんね!


そこで、「出したい音をイメージしてみよう(ソルフェージュしよう)」というアイデアがおもいついたとします。
この段階ではそれでうまくいくかはわからないけど、このアイデアを実行します!


・・・結果は上の音があたらなかった、とします。
しかし、「音をイメージする」というプランは実行できました!
この実行したかどうかがとっても大切です。
音はあたらなかったけど、次のことがわかりました。


その跳躍を演奏するためには、「音をイメージする」というプラン以外にも何かする必要がある。
(これは、ひとつのプランを本気で実行したからこそわかる大事な情報です!)
また、音をイメージしていなかった時より、近い音が鳴ったり、あたりそうに感じたかもしれませんね。


では、「音をイメージする」というプランに加え、新たなプランを用意します。
「跳躍するときに、息をより多く吐いてみよう。」を実行してみます!


・・・結果は出したい音よりもさらに上の音にあたりました!
これも「外れた」と言ったりしますが、先ほどとは結果そのものが全然違います!
そして「息をより多く吐く」というプランを実行したからこそ生まれた結果です。
わかったことは、「息を多くする度合を減らしていいかもしれない」あるいは「アンブシュアを緩めてもいいかもしれない」ということです。。(もちろん上記以外のアイデアやプランはたくさんあります!)
そして、そのどちらかを実行します!


・・・練習していた跳躍がうまくいきました!!
こうした「プランを実行する」過程を踏まえ、「できた」という事実をしっかりと受け入れることもとっても大切です。


ひとつの例をとって説明してみましたが、このようにプランや意図を持って実行した結果は、音が外れてようがどうだろうが、良し悪しで評価するものではなく、次につなげれる一つの情報になります。
だから、演奏の「結果」を基準に評価するのではなく、「プランや意図を実行したかどうか」を基準とした方が効率的にうまくなっていけるんですね。
自分の技術への信頼も深まり、本番でも引き出しやすくなります。



練習が「ダメな自分をいじめて、変えようとする」作業から「自分の可能性に向かって冒険していく」作業に変わります。





森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ
 トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

レッスンのご依頼について






2013年11月11日月曜日

自分のために演奏する。

今日、中学生とレッスンをしている時、ふと考え事をしました。
「僕は中学生の頃、なぜトロンボーンに惹かれたのか。演奏することの何が幸せに感じるのか。」


理由はひとつではないと思います。
音楽を通しての出会いも、自分の音楽で人が何かを感じてくれることも、自分にとって大きな意味を持ち、その体験は本当に幸せなことです。
でも、自分にとってもっと根本的な原点がすっぽり抜け落ちていたことに気づきました。

それは、自分の奏でるトロンボーンの音に、自分自身がわくわくして楽しくて心地よくて仕方がなかった!!という体験です。
それがトロンボーンに魅了された一番最初のきっかけ。
当時どんな音だったかははっきり覚えてないけれど、単純に自分の吐いた息が音になること、だんだん出せる音や吹ける曲が増えていくことが、やたら嬉しかったんです!
誰よりも自分が自分の音を楽しんでいました。そして自分が楽しいと感じる音をだれかに聞いてもらうのもこの上ない喜びでした。




「もっと上手くなりたい」という欲求も、もともとは自分がもっとこんな音で吹きたい、こんな曲が吹けるようになりたい、という自分のための欲求でした。
それがいつからか
「自分の演奏に満足したり、楽しんでいてはいけない。だれかに聞いてもらったり認められるためにはもっと努力して上手くならなければいけない。」と考えるようになりました。

聞いてもらいたい/認めてもらいたいという欲求自体は自然なことですが、そのために「自分の演奏を楽しむこと」を犠牲にしてしまったのです。
この自己否定をモチベーションとした練習サイクルの代償はあまりにも大きなものでした。




この考えは高校~大学の間でじわじわと広がっていき、大学三回生の頃、完全に浸透していました。それからというもの、他人の評価に一喜一憂するだけで、演奏する楽しさや喜びを感じられることは明らかに減っていきました。
以前とは反対に、自分の演奏に対して否定的になり、自分の音が嫌いになってしまいました。
最後には自分の音を誰かに聞かれるのも、自分が聞くことも苦痛になってしまいました。




けれどそこまで演奏することに苦しみながらも、トロンボーンを続けていきたいと思えたのは、
「自分が、自分の演奏を楽しむ」という体験がそれほど自分にとって強烈に残っていたからです。
そんなとき、その頃自分が好んで聴いていたミュージシャンや演奏家にある共通点を見つけました。
それは、自分の歌を、演奏を、曲を、本当に愛おしそうに大切に奏でていたのです。
そんな人たちに魅せられ憧れている自分に初めて気がつきました。

今自分は、「自分の楽器から出ているリアルな音を聞くこと」から始めています。
良いか悪いかの評価をせずただ自分の音を聞くというのははじめ不思議な感覚がしました。嫌悪感はなく、なんだかちょっと心地いい。そして驚きました!今まで自己否定的な考えや先入観があったため本当の自分の音を聞いていなかったのです。
自分に協力的になって、少しずつ自分の音が好きになり始めています。
するともっとこんな音が出したい、うまくなりたいと再び思えるようになりました。
そうだ、自分のために演奏しよう。

自分が好きと思えるからこそ、だれかに聞いてもらいたいと思うのです。





森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ
 トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

レッスンのご依頼について

















2013年11月2日土曜日

ブレスを吸うためには、演奏を一旦やめる!

曲の途中でブレス(息継ぎ)をとるということは、
・一旦そこで演奏をやめ
・呼吸を始めて(息を吸って)
・また演奏を始める
という三つの動作の連続と言えます。

え、演奏をやめるってどういうこと?って思う方もいらっしゃるかもしれませんね。
管楽器演奏では、しばしばフレーズをつなげるために「短いブレス」「早いブレス」が要求されることがあります。
僕は長い間、どうすれば音楽の流れを切らずにフレーズをつなげられるブレスをとれるのかわからないでいました。「息持たないし、吸いたいけど、(フレーズが)切れちゃいけない。切れないように吸おうとするとうまく吸えず苦しいし、逆に流れが不自然になってしまう。どうしたらいいの!?」という感じで本当に混乱していました。なので今でもブレスに苦手意識を持っています。

息継ぎをするということは、そこで音がなくなる間が生まれます。
なぜなら演奏中は息を吐き続けていて、ブレスをとるときは、息を吐くのをやめて息を吸うからです。と、当り前の話なんですが・・・つまり息を吸うためには演奏(息を吐くこと)をやめることが必要なのです。


吐くとき、吸うときで働く筋肉は違います!

なのでブレスをとるときには、それまでの吐くために働いていた筋肉の活動をOFFにする必要があります。そうしないと息を吸おうとする動きに対して、息を吐こうとする動きが吸うのを邪魔してしまうのですね。
一番わかりやすいのは腹筋です。腹筋は、息を吐いているときに働き、息を吸うときには休んでいる筋肉です。

もし、ブレスをとるときに、腹筋が働いていたら、思うように息が吸えず、返ってブレスが長くなってしまったり、次のフレーズで息が持たなくなってしまう可能性があります。
フレーズをつなげるといっても、特別な場合を除いてそこに全く間がないわけではありません。
むしろ、その「間」こそ音楽の流れの大事な要素になるので、ブレスをとるときに以下の三つのことをする時間と自由を自分に与えてみてください。

①一旦演奏をやめる
②呼吸を始めて(息を吸って) ←これは演奏をやめれば勝手に起こるので意識しなくていいかもしれません
③また演奏を始める

どれだけ早いブレスでもこの三つのことをしています。
ならばどれだけ早く演奏をやめれるか、「演奏モード」を解除できるかがポイントになります。



試してみたい方は、一度簡単なゆったりとしたフレーズでやってみてください。

1フレーズごとに、「演奏をやめる」⇒「演奏を始める」を繰り返してみるとどうでしょう?

ブレスの間はどれだけあけても構いません。一度演奏をやめる時間と自由を作ってください。
そうすると思ったより長いブレスになったとしても、不自然にならないと思います。
いつもより落ち着いてたっぷりと息が入ってきませんか?
「演奏をやめる」を「アンブシュア解除」とか「腹筋はOFF」など言い換えてもいいと思います。




森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

レッスンのご依頼について

2013年11月1日金曜日

楽器に息を吹き込むな??

金管楽器を演奏するとき、「息を楽器に吹き込む」「楽器に息を入れる」というイメージや意識をお持ちでありませんか??

僕は持っていました。特に「楽器に息を入れて」という指導は吹奏楽部などでよく耳にしますね。
中学や高校へ指導へ行く時も、頑張って楽器に息を吹き込んでいる生徒さんをよく見かけます。


さて、演奏するために息を吐くことは必要ですが、「楽器に息を入れる」は意図してすることではありません。
何のために息を吐くのかというと、振動を生むためです。
音を出すためには、振動が必要で、その震動は息を吐くことで生まれます。
金管楽器で音を出すために必要な振動は、唇とマウスピースが出会うところで生まれますね!
なので、そこで振動(バズィング)が生まれれば息の役割はもう果たせているのです。
当然唇と楽器はくっついているので、吐いた息は唇で振動を生んだあと、勝手に楽器の中に入ります。
「楽器に息を吹き込む、楽器の先まで息を入れる」という意識が、「唇で振動を生むために息を吐く」に変わると、ずいぶん労力が減ると思いませんか?
実際にマウスピースだけをラクに鳴らすのも、楽器をつけて演奏するのも同じ労力でいいんです。
もちろん音量や音域によって必要な息のパワーは要ります。けれど楽器に息を吹き込む労力は必要ありません。
唇で生まれた震動が、管楽器を伝わって、それぞれの楽器の魅力的なサウンドを生んでいます。
楽器は「拡声器」でしかありません。発音源は自分自身にあります。


タイトルの「息を楽器に吹き込むな Don't push air through trombone」という言葉は、アレクサンダーテクニーク教師グレッグホールダウェイとのレッスンのなかで聞いた言葉です。グレッグは数多くの音楽家とレッスンしてきた経歴がありますが、彼自身は音楽家ではありません。
専門分野でないにも関わらず、僕の演奏を少し見ただけでこのアドバイスをくれました。
こんなことも言ってくれました。
「君のトロンボーンは、自分(トロンボーン)としての役割をすでに知っている。君は演奏する時の君自身の役割を知る必要があるんだよ。」




森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

レッスンのご依頼について

2013年10月30日水曜日

吹奏楽部の部長さんとのレッスン

九月、ある学校に
レッスンに行ったときにトロンボーンの生徒が「最近とても調子が悪い。息が全然続かない。」と相談してくれました。

前のレッスンは一ヶ月前、その間彼女に何が起こったんだろう。調子が悪くなったその時に考えていたことや彼女自身に起こった出来事を思い出すお手伝いをしました。

すると彼女は自分で「九月から部長になった。部長だから今よりもっとうまくならなければいけない」と考えていたことに気づいてくれました。

そこで、「演奏する時は部長という肩書きを忘れて、バンドの1メンバーとして音楽を楽しんでもいい」ということを提案しました。
音はとても開放的な響きになり、彼女自身がラクになったとフィードバックをくれました。
...
部活の部長や、先輩になったときに、もっとうまくなりたいという気持ちは素敵です。
自分を突き動かす大きなエネルギーなりますよね。
けれどそこに義務感や責任・〜しなければという思考が加わると身体を固めてしまい思うように演奏できなくなることがあります。

部長であるため、先輩であるためにうまくなる必要はなくて、音楽が好きでもっとうまくなりたい、いい演奏をしたいと思っている彼女の本当の
望みに繋がったレッスンでした。





森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

レッスンのご依頼について

「難しい」という前提、それってホント?

久しぶりの更新になります。
ボディチャンスのアレクサンダーテクニーク教師養成コースへ入学し5か月が経ちました。

アレクサンダーテクニークのレッスンを受けることで、演奏するときに自分が無意識に行っている癖や思考のパターンに気づくことができ、それらに疑問をなげかけ、変えていくことができます。
それは、より自分を知ることでもあります。
レッスンを受け続けていると、より深い根本的な自分の考え・信念に辿りつくことがあります。
それは、表面上では、当り前になっていて普段なかなか気づくことができません。



最近ふと、そんな自分のもつ根本的な考えに疑問を持ち始めました。
その何かというと・・・

「トロンボーンを演奏することは、自分にとって難しいもの」という大前提のもと、楽器に向かっていたことでした。


この大前提があるため、こうも思っていました。
トロンボーンを演奏することは自分にとって難しい、だから人一倍頑張らなければ演奏できない。苦労しなければいけない。」そういうものなんだ。
と考えていたのです。
そしてこの「トロンボーンを演奏することは難しいから頑張らなくちゃいけない」という思考のパターンは、僕にとって「力みのスイッチ」になっていることに気がつきました。
トロンボーンを演奏しようとしたとき、これらの思考により、ギュッと体に力が入るのです。これは感覚的にはわずかなものですが、実際には演奏に大きな影響を与えていました。



僕の持っていたこの「思い込み」はなんだか漠然としています。
・なにが、難しいのか
・なにを、頑張らなければいけないのか
がはっきりしていないんです。


そこで疑問が浮かんできました。
「いったい何をそんなに難しいと思っているんだろうか」
この「自分にとってトロンボーンは難しいものである」という考えが生まれたのはいつなのか、何がきっかけかははっきりわかりません。
もしかしたら、先生から言われたことを言われたとおりにやろうとしていて、それが難しいと感じる原因なのかもしれません。







さて、「トロンボーンを演奏することは自分にとって難しい」それはホントなんでしょうか?
この問いかけに対して、ひとつ新しい答えが出ました。

「自分にできること(すでに身に付いた技術)は、簡単にできる。現時点でできないことはできない。」
かなり表現が変わりましたね!「難しい」という言葉を使っていたときは具体性に欠け、「できること」と「できないこと」を混同していました。
自分に「できること」「できないこと」がはっきりすると頭の中がとてもすっきりしました。とくに「できること」について難しく感じる必要や、難しくやる必要は全くないと思えます。


できることについて例をあげると、
・「ここからここまでの音域は演奏できる」・「このフレーズは演奏できる」
・「この速さは演奏できる」 など

金管楽器で音を出すということをさらに細かく、動きについて例えると、
楽器を持ち上げることができる。マウスピースを口につけることができる。
口を閉じることができる。息を吐くことができる。(すると息が唇を押しあけ、振動が生まれ音になる。) とてもシンプルでそれぞれの動き自体簡単ですね!


つまり、
「私は、トロンボーンを簡単に演奏できる」もホントの事実なんです!

そもそも僕の願いは、
「自由に演奏したい、ラクに楽しく演奏したい」ということです。
それなのに、それを難しくやることは矛盾していましたね。
そこで新たなプランを作ってみました!

「私は、トロンボーンを簡単に演奏する。」


そう思って、演奏してみると「力みのスイッチ」が入ることなく驚くほどすらすらと音が出ました。
それもとても心地の良い響きで・・・
そして、自由で楽しい・・・!

興味がある方はぜひぜひ試してみてください♪




森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

レッスンのご依頼について


















2013年10月16日水曜日

手・腕が演奏に参加する

「健やかにトロンボーンを吹く」管理人の森岡です。


身体の一部分だけにフォーカスするよりも、身体全体の動きを観察した方が改善のヒントが得られることがあります。
これは単に姿勢が良いか悪いかという視点ではなく、体全体がどのように演奏に参加しているかを考えます。

姿勢が良い、悪いという判断は、結果について言っていることでそれを直接正そうとするのは強引な気がします。その結果にどのように至ったのかという過程が変わらないまま、結果だけを変えようとすると、いつも無理して矯正しているような状態になり疲れやすくなったりストレスや痛みのもとになりそうです。

例えば、譜面や演奏している手元を見るために、自分の頭や首・背中をどんなふうにしているか?
楽器のマウスピースの口をつけるために自分の頭や首・背中をどんなふうにしているか?
が、実際の演奏している指の動きや、口や舌、呼吸などに影響しています。


過去記事ですが↓も身体全体の動きを観察することが役に立った例です。



(2013年10月16日の記事です)

昨日は、関西で演奏活動をされているトランペット奏者の方とのレッスンでした。
※ご本人の了承のもと、レッスン内容を掲載しています。

レッスンの始めに、『今日はレッスンでどんなことがしたいですか?』と尋ねます。

なぜかというと楽器のレッスン、身体の正しい使い方を伝授するレッスンではありません!
やりたいことにアレクサンダーテクニークを役立ててもらうためのレッスンです。
こちらからいきなり新しいものを渡すのではなく、今あなたが持っている望みからレッスンがスタートします。
アレクサンダーのレッスンにどんな期待を持っていますか?
今改善したいと願っていること、探求したいことや興味を持っていること、悩みや行き詰りを感じていることなどなんでも構いません。

 
今回のレッスンでは、『フレーズの中に出てくる低い音から高い音への跳躍』、『リップスラー』について、より良いアイデアはないか?というレッスンになりました。



低い音から高い音への跳躍

実際に跳躍の出てくるフレーズを演奏してもらうと確かに吹きにくい様子でした。
聞いてみると『低い音を吹いてから続けて高い音を吹くとき、高い音に備えてアンブシュアを意識しすぎちゃう』『なるべくプレスをしすぎないように』というようなことを思っているとのこと。

そこで、跳躍する時に、息の量を増やすことと、マウスピースを自分の方にプレスすること(マウスピースを唇により密着させること)を提案してみると、跳躍の上の音に移行しやすくなりました。
 
音を出すためにはマウスピースと唇が密着していることが必要です。「プレスしすぎないように」という思考があることで、必要な動きに「NO!」と言ってしまい体は混乱して緊張を生みます。
今回の場合、マウスピースを唇にプレスする(くっつける)ことは、左腕の、主に肘(ひじ)の関節がやってくれることでした。息の量が増える分、マウスピースと唇の密着を積極的に維持しようというプランを加えると、フレーズ全体が明るい伸びのあるサウンドになりました。ご本人からも吹きやすいというフィードバックが得られました。


リップスラー
「リップスラーを吹くと口元が動いちゃって、吹きにくい」とおっしゃっていたので、「動かない」を目指すのではなく、「口元が動く」を出発点に考えました。
仮に「動いちゃう」ことを肯定すると、それに合わせて楽器も動かしちゃおうというプランを提案してみました。
「動いちゃう」に対して手首で楽器を固定することをやめて、楽器を持っている左手の手首を自由にしてあげて、リップスラーを吹くときのアンブシュアの変化や顎の動きに合わせて、左手の手首が楽器を動かしてくれていることを演奏しながら観察してもらいました。
これはかなり手応えがあったようで、吹いた後、グーサインをもらいました。よかった!

『高い音への跳躍』も『リップスラー』も呼吸や腕や手の使い方の意識を持つだけで、よりやりやすくなりました。
 

お互い身体の部分的なパーツにだけ集中して考えるのではなく、身体全体の動きを見ることが改善のヒントになりました。

僕自身も演奏はいつでも自分の体全体があって成り立っているものだと実感できるレッスンでした。
 

 







◆管理人プロフィール◆
 

森岡尚之 / もりおかなおゆき
 
大阪府高槻市出身。
大阪音楽大学トロンボーン専攻卒業。トロンボーンを今田孝一・呉信一各氏に師事。
2013年よりbodychance アレクサンダーテクニーク教師養成課程で学び、2015年8月ボディシンキングコーチ資格を取得。
宝塚歌劇オーケストラトロンボーン奏者/山下浩生氏の主催するトロンボーン合宿にてレッスンを行うほか、大阪で「トロンボーン奏者のための身体の使い方」1日セミナーを開催。また学校吹奏楽部への出張レッスン、音大生など音楽家との個人レッスン、アイディア音楽センターでレッスンを行っている。
bodychance認定ボディシンキングコーチ


体験レッスン予約受付中です。
※個人レッスンも承っています。
◆レッスン情報◆

自分の音をちゃんと聞いたら、体の固さが消えた!

9月、ボディチャンス校長のジェレミーチのレッスンを受講しました。
8月~9月に本番が何度かあって、楽しめた本番や、またうまくいかず落ち込んでしまう本番もありました。
落ち込んだ本番の翌日から、すっごく調子が悪くなってまともに音が出ないほどになっていました。
ちょうどそんな時にジェレミーのレッスンを受けたんです。

まず、相談したことは、「自分の音を聞くのが本当に嫌になってしまって、練習もまともに続けられない。」ということ

ジェレミーから思いもよらない言葉が返ってきました。

「本当に自分の音を聞いている?」
 へ?って感じですが、実際にジェレミーの前で音階を吹いてみる


「今の演奏はどんなだった?」
『全然だめだった』という以外、何も答えられませんでした。


「何がだめだったの?具体的に言ってみて」
思い浮かんだのは、音程とか発音とかリズムとか音色とか・・・


「じゃあ、どんな音程、発音、リズム、音色だったの?どういう風にだめだったの?」
 うーん、だんだん答えに詰まってきます・・・
実際自分がどんな音程、発音、リズム、音色で演奏したのか思い出せないんです。
頭に浮かんでくるのは、『今の演奏に対する自分の感想』ではなくて、ふだん指摘されていることや気をつけていることばかり
そう、自分が演奏している時、実際にどんな音が鳴っているのか聞いてなかったんです!


「そう、今まで自分の音を聞いてあげてなかったんだね。もし、実際の音を聞かずに理想を追い求めてるとしたら、それは幻想だよ。」
この言葉を聞いて、レッスン中に思わず泣いていました。
何か今までずっと自分を苦しめていたものから開放されたような安心感と、自分に対してなんてひどいことをしていたんや!っていう悲しさで。


「自分の音を聞かない他に、今まで何をしていたか知ってる?」
・・・・・・・・・


「自分の演奏に対して、いつもダメだダメだって批判していたんだよ!」
!!!!


「だめだって批判は具体的じゃないよね。批判しない代わりに、実際の自分の演奏がどんななのかを聞いてみよう。聞く能力を使おう。」
自分の演奏プランに『実際に鳴っている音を聞く』というプランを加えて演奏してみると、今まで演奏するときに常にあり続けた不安や緊張が激減しました。


人から批判されると、萎縮したり固まったり怖くなったり自信がなくなったりしますよね。身体は緊張して固くなってしまいます。
それと同じことを自分が自分自身に対してやっていたんです。
吹けばそれを自分で否定して、でも練習しなくちゃいけないと思ってるから体に吹けと命令する。そして吹けばまたそれを否定する。これでは練習が続けられないのも無理はありません。

だから、自分の演奏を批判するよりも、ちゃんと聞いてあげて実際にどんな音が聞こえるか知る方が『うまくなる』につながるんだと思います。



今は自分の演奏プランに『実際に鳴っている音を聞く』というのを意識的に取り入れています。意識が『音』に向けられるので、より演奏する目的も明確になって、呼吸や舌や顎など、演奏に必要な体の動きがよりシンプルに、より機能的になりました(^^)





森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

レッスンのご依頼について


 














2013年10月8日火曜日

演奏家のための「体の地図作り」

アレクサンダーテクニーク教師養成学校『BODYCHANCE』で僕がどんなことをどんなふうに学んでいるのかを紹介してみたいと思います。

現在僕はBODYCHANCEの教師養成課程で三つのクラスを受講しています。
そのうちのひとつに、「Body Thinkingボディシンキング」というクラスがあります。

「体、考える」って・・・どんなクラスかというと、
アレクサンダー・テクニークの考え方にもとづきながら、体の構造と動きについて学びます。単なる解剖学の知識だけでなく、それを自分自身の体にあてはめることに重点を置いて学びます。
(BODYCHANCEのホームページより引用)


上記のように、クラスは筋肉の名前や骨格の名前を教科書を見ながら覚える、知識を得るという授業ではありません。
実際の体の構造や動きを知ることで、自分の持っている誤った認識に基づいた体の使い方にはっきりと気づき、その認識と使い方を変えていく、というものです。
これを「ボディマッピング」(体の地図作り)と呼びます。
では、このボディマッピングが「演奏とその上達」にどう関係しているのでしょうか。


認識の違いが、痛みや不要な緊張を生んだり、上達を阻んでいる

呼吸に関していくつか例をあげてみます。


「息はお腹に入る?」
-いいえ、お腹には入りません。肺に入ります。「息をお腹に入れて」という話を聞いたことがありますが(実際に僕もそう教わり実践しようとしていました)、お腹に息が入るという「認識」を持ち、お腹に息を入れようとすると、胸のあたりが圧迫されて、上手く吸えず苦しくなった経験があります。では、「息は肺に入るので、その周りの肋骨は広がります。その結果、肩も少しあがるでしょう。それでいいんだ」、と思ってみてください。息の吸い方や吸う量はどうなりますか?


 


 
胸部のX線写真です。肋骨の中の黒い部分が肺です。鎖骨より上まであるんですね!肺と心臓の下に横隔膜と呼ばれるドーム上の筋肉の膜があります。横隔膜により胴体の上部(肺と心臓)と下部(その他の内臓)を分かれています


「腹筋を使うのは、吸う時?吐くとき?」
-「お腹を使って」「腹筋を使って」というのは、吸う時なのか吐くときなのか、それとも両方なのかどうなんでしょう。腹筋が働くのは「吐く」ときです。吸うときには必要ありません。また息を吸う時は肺のスペースを広げるために横隔膜という筋肉の膜が下に下がります。すると横隔膜の下にある内臓も一緒に下に下がっていきます。この時に腹筋に力を入れていると、横隔膜と内臓が下に下がる(肺のスペースを広げるための)動きを邪魔してしまいます。なので吸う時は「腹筋の仕事はOFF。休めてあげよう。」と思ってみてください。息の吸い方や吸う量はどうなりますか?


「息の通り道は、どのあたり?」
-「息は首の後ろの方を通る」という指導を聞いたことがあります。実際には息の通り道「気管」は、背骨・食道の前にあります!首のかなり前側ですね。では、「息の通る道は、首の前の方にあるんだ」と思って吸ったり吐いたりしてみてください。呼吸に変化はありますか?


上記のことを試してみて、呼吸がしやすくなった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
このように認識が変わることで、これまでうまくいかなったことが、すぐに改善されることがあります。
以前の僕は、その「うまくいかないこと」に対して、ひたすら練習するという方法を選択していました。しかし、練習すればするほど改善されるどころか、痛みがひどくなったり、逆にうまくいかなくなってしまうことも多くありました。
それは、自分の体について誤った認識を持ったまま練習し続けた結果とも言えます。
「楽器の練習」というと、実際には楽器を演奏している自分自身の動きの練習とも考えられます。
呼吸、姿勢、唇、顎、舌、お腹、指の動きなどを多くの人が意識していますよね。
けれど「どこをどうやって意識すればいいのか」「実際の体はどうなっているのか」という情報はなかなか得ることができません。
この二つがあいまいなまま、意識しようとすると、あまり効果が得られない・以前より吹きにくくなるということがあります。


「ボディマッピング」は、自分自身の体についての意識をより明確に、正確にして使えるようにする技術です。
アレクサンダー教師養成課程の中では、「教える」練習を始める前に、自分の体についての意識を2年かけて洗練させていきます。僕は今その段階にいます。

このブログでは、僕自身の演奏するときの「どこをどうやって意識する?」「実際の体はどうなっているの?」という疑問を、明確に正確に洗練させていく過程で得た情報や学びをシェアしていきます。


また、この教師養成課程で学んだことを、取り入れたレッスンを10月始めました。
レッスンの問い合わせはこちらからお願い致します。
レッスンのご依頼について



森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い








 






























2013年10月5日土曜日

プロフィール

 

<プロフィール>

 





森岡 尚之 / もりおか なおゆき



1990年生まれ。大阪府高槻市出身。


トロンボーン吹くことをはじめ音楽活動や、
その中で知った「アレクサンダーテクニーク」の
レッスンをしています。



【経歴】
大阪音楽大学卒業。
トロンボーンを今田孝一、呉信一の各氏に師事。

BODYCHANCE教師養成コースで学び、
現在アレクサンダーテクニーク教師実習生として
活動中。


 




2013年10月3日木曜日

再び心が燃え始める~挫折からアレクサンダーテクニークとの出会い~

僕は、自分のトロンボーン演奏と、トロンボーン&金管楽器のレッスン、吹奏楽での合奏指導にアレクサンダーテクニークを取り入れています。
今回は、僕のこれまでの音大卒業当時の話と、それからアレクサンダーテクニークとの出会い、これから目指すものについてお話させて頂きます。


《音大での挫折》
中学の頃からずっと夢見て入った音楽大学を卒業する時のこと、『もう音楽は続けられない、精神的にも肉体的にも完全にまいってしまった。』音楽を嫌いになりたくないけど、苦しい。楽器のことを考えるだけで胸が詰まったように息苦しくなって、吹けば背中と腰が痛く、練習の終わりや本番後にはひどい頭痛と肩こりがやってくる。自分にひどい嫌悪感を持っていて、音を出すことすら苦痛・・・練習もまともにできなくなり、卒業試験の演奏は散々なものでした。
昔は心からトロンボーンが好きだったのに、どうしてこうなってしまったんだろう。なにがいけなかったんだろう。音楽を辞めなら生きる価値を何に見いだせばいいんだろうか。
大学を卒業してから、一歩も前に歩み出せずに、そんなことを考える日々が続きました。

けれどいくら考えてもこれまでの自分の行いをただ責めるばかりで、答えは出ませんでした。
どうして、トロンボーンを演奏しようとすると、体が痛くなってしまうのか、心が苦しくなって不快になるのか当時は本当にわかりませんでした
そして自分にとって重要なのは、どうすればトロンボーンを続けていけるのか、でした。
このままでは心も体も根をあげて、音楽が嫌いになってしまう一歩手前だったのです。

 
《アレクサンダーテクニークとの出会い》
大学を卒業してから一年間、なんとかトロンボーンを続けれるよう試行錯誤を繰り返していました。姿勢や呼吸について色んな書籍を読んだりエクササイズを試したり、奏法についても改めて見直してみたり。しかしどれも根本的な解決には至らず、唯一卒業してから自分で企画して臨んだ演奏会でも、途中で音が全く出なくなってしまい、心が折れかけていました。
 
そんな時、たまたま東京藝術大学でアレクサンダーテクニークの講師をされているバジル・クリッツァーさんのブログを見つけました。そこには、今まで色んな情報に溢れて混乱していた金管楽器の奏法について、体の実際の構造に基づいた、とてもスッキリとして具体的なアイデア、自分の考えやメンタル的な部分が体の痛みと演奏に直接影響を与えているということなど興味深い内容ばかりが目に飛び込んできました。その日から、バジルさんのブログを読んでは、練習する。の繰り返しでした。

 
すると、練習し始めて数分の間、体の痛みがなくなって、呼吸が自由になり久しぶりに自分が吹きたいように吹けたんです!いったいこのアレクサンダーテクニークってなんなんだろう?もしかしたら、もう一度トロンボーンが吹けるかもしれない・・・!!音楽が好きになるかも!という希望が湧いてきました。
そして、このアレクサンダーテクニークというやつに賭けてみよう。これでダメだったら楽器はやめよう。
本当にわらにもすがる思いでした。
 
さっそく大阪梅田にあるBODYCHANCEというアレクサンダーテクニークのスタジオへ体験レッスンを受けにいきました。そこでは、自分の体について今まで間違った認識を持っていたことに気づかせてもらい、先生にサポートしてもらいながら、新しい意識で楽器を吹いてみると・・・すっと今まで聞いたことのないような、遠い昔に聞き覚えのあるような音が出てきました。自然に出てきた豊かで響きのある音・・・これが素直にでた僕の音なんだ・・・!
 
 
それから、しばらくして発表会に出ないかというお誘いがあり、ソロの演奏をすることになりました。
めちゃめちゃあがりまくったけど、レッスンで教わったことや、バジルさんのブログで読んだことで、そのときできそうなことをとにかく実践してみました。演奏はミスばっかりでぼろぼろ・・・だったかも知れない、けれど僕にとっては今までにない初めての体験でした。
それは何かというと、どれだけあがっても、ミスをしても、アレクサンダーテクニーク的なアプローチを使うことで、自分のやりたい音楽を最後まで意図し続けられたんです。いつもはあがりに対する恐怖心や、ミスしたときの動揺、人からの評価、ネガティブな思考が常に自分のやりたい音楽の邪魔をしていたけれど、このときはそれらに邪魔されず、本当に自分の音楽を最後まで考えることができました!!これはとても楽しく喜ばしい体験でした。そうだ、これが自分がやりたいこと!うん、トロンボーンを続けていきたい、続けていける!と確信しました。
再び心が燃え始めるのを感じました。

 
 
 
《教えること》
そんな素敵な体験をした後すぐ、母校の高校へレッスンに行ったとき、あるトランペットパートの生徒との出会いがありました。彼女は二年間、真剣に打ち込んだ吹奏楽部の最後の定期演奏会でソロパートを演奏するようでした。合奏練習でたまたま彼女のソロパートを聞いたのですが、緊張して音がまるで出ない。練習が終わってから彼女に少し声をかけました、小声で「すいません。すいません。」というばかり。それから高校に行くたびに彼女と話をするようになり、すこしずつ望みや悩みを話してくれました。「(部活の)みんなに
迷惑かけてる」「自分はへたくそだからソロなんて吹けない」とネガティブな話ばかり、けど幸いにも「吹けるようになりたい」「吹きたい」という意思が感じ取れました。自分と似てる、それなら役に立てるかも!
それから彼女の演奏を見て、話を聞いて、自分の経験とバジルさんのブログを頼りに少しずつアドバイスをしていくと、だんだん音が出てくるようになってきたんです。そして出てきた音はすごく綺麗な音!
そして音が出るようになるにつれて彼女の印象がどんどん変わっていきました、実際とても明るく好奇心旺盛な生徒だったんです。だんだん彼女のほうから、「これはどうやったら吹けますか?」「いつもこれがうまくいかないんですけど、どうすればいいですか?」ってとてもキラキラした目で聞いてくる。ついこの前までとは見違えるくらい楽器と部活を楽しんでいました。これまた僕にとって素敵な体験でした。
 
自分が今まで苦しんできた経験、そしてアレクサンダーテクニークを使ってそこから健全に自分の好きな音楽を楽しみ上手くなっていく過程が、誰かの役に立つのかもしれない・・・!
それって自分にとってなんて素晴らしいことなんだろうか!!
 

《音楽家のためのアレクサンダーテクニーク教師を目指す》
そんな経緯を経て、現在アレクサンダーテクニーク教師を目指しています!
アレクサンダーテクニークに魅力を感じるのは、
 
・アレクサンダーテクニークを使うことで、ネガティブな思考や評価に邪魔されず、本番で自分のやりたい音楽に集中し続けられること こころから音楽を楽しめること 
 
・自分自身の力で自分の可能性を引き出し、伸ばしていけること
 
・肯定的、前向きなエネルギーを源に上手くなっていけること
 
です。そしてその方法を伝えられる教師になりたいと思っています。
そしてプロアマ問わずパフォーマンスする全ての人々が、その才能を惜しみなく発揮できて、どこへ行っても個性溢れる豊かな音楽を楽しむことができる日本に、なればいいなあと、本気で夢見ています(!!)
 







森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

レッスンのご依頼について



2013年9月18日水曜日

自分の体格を活かして吹く

9月16日、バジルクリッツァーさんの『管楽器のためのアレクサンダーテクニークセミナー』にお手伝い兼受講生として参加させて頂きました!

その中で、個人的にレッスンしてもらった内容をシェアします。

レッスンの中で見てもらったのは、『大きい音』について。
吹奏楽や、オーケストラの中で大きな音を吹いても埋れてしまうのが悩みでした。

『大きな音』を意識して吹くと、体に変な力が入って息が吐きずらかったのですが、レッスンの中で体がどんどん息を吐くこと自体はかなりラクになりました。

大きい音を吹くときに
・息をたくさん吐く
・口は緩めてあげる
・タンギングを強めにする
というアドバイスを頂きました。

ここまででかなりヒントをもらったんですが、それを素直に実行できない自分がいる。なんでだろう。

『息をたくさん吐くことや、
それに伴って口を緩くすることを恐れていない?』
と聞かれてピンとくるものがありました。

ひとつは、大学の頃からよく力が入りすぎていると言われていたし、自分でも当時の奏法になにか限界のようなものを感じていて、ある時から『力が入ること』=悪いこと、だと自分の中で言い続けてきたことが原因かも。
だから息をたくさん吐くという、より力を使うことに対して抵抗があったんです。
バジルさんから教わった上記のアドバイスは当時僕が自然にやっていたことと似ています。しかし当時それらのことを自分で『禁止』したことが今も強く残っていたのですね。
このあたりのことは自分自身でもっと深く掘り下げれそう。今わかるのは、その当時、自分の演奏に対して『コントロールの効かない、ただうるさいもの、雑なもの』と思っていて、理想にしたいのは、『もっと効率的な息の使い方や労力で、コントロールできている演奏』でした。
現在の僕の理想とはだいぶ違いますが、当時思っていたことをそのまま言葉にするとこんな感じですね。

さて、ここでもう一つ思い出したことがありました!
大学のころ、常に意識していたプレイヤーがいたこと。その人はとても身近な人で、よく一緒に演奏させてもらうことがあったのですが、その人の奏でる音にすごく憧れていたんです!

『(僕よりも体が小さいのに)よく響いてて、アンサンブルの中でもよく聴こえて、心地よい音色、いいなあ・・・』といつも思っていました。そしてその人の演奏こそ、僕には『効率的で無駄がない』ように思えたのです。
だから自分が演奏するとき、いつもその人の吹き方や姿がイメージにありました!
もちろん僕とは体格が全然違います!
けど吹くときにその人の姿まで、真似しようとイメージしていたので、体に『小さくなれ』と言っていたのとほとんど同じです。もちろん小さくなれと言われても小さくなれるはずないので、体をギュッと固めて緊張するようなことをしていたようです。



【自分の身体のサイズを再認識】
バジルさんからの提案で、

上を向いて天井を見る→天井と自分の距離を確認する


下を向いて床を見る→地面と自分の距離を確認

右を見て右側の壁との距離を確認
左を見て左側の壁との距離を確認

今度は、前を見て前の壁との距離を確認。後ろを見て後ろの壁との距離を確認。
こうすることで、自分の身体のサイズが再認識されていく。窮屈なものが緩んでラクになる感じがしました。

そして、その自分のサイズを意識の中に入れながら、大きな音で吹きたいフレーズを吹いてみる。

最初に書いた、身体の力みや息の吐きづらさが全くなくなって、今までと比べて大きな音が出ました!
何より、久しぶりに自分の体格を使って思いきり吹けたのがとても気持ちよかった!

次の日さっそく吹奏楽の本番で試しました!自分の体格をそのまま使って、必要な力を遠慮なく使うことを許すと、いつもよりアクティブに演奏できました。今までと違うけど、なんかこれが自分の音だって実感がある。
指揮者から「トロンボーンが聞こえない」と言われた箇所も普段よりラクに大きい音で吹けた!
指揮者の方がにこっとしてくれたのも見えましたよ(^^)笑

色んな演奏家の音を聞いて、こんな音を出せたらいいなと思うことはしょっちゅうあるけど、楽器の音色は、人それぞれ違いますよね。身体の使い方も違えば、使っている身体自体、誰一人同じ人はいません。
自分の求めるいい音色は、自分自身をフル活用できた時に出せるのかもしれません♪

ほんとちょっとしたことを思い出しただけなんだけど、今回のレッスンでは、それが大きな変化をもたらしてくれました!



森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

レッスンのご依頼について
 

2013年9月14日土曜日

10ヶ月ぶりの音だし 以前の感覚と違ってOK!

今日は、トロンボーンの方とレッスンさせて頂きました!

楽器を吹くのは10ヶ月ぶり、明日から久々の本番に向けて復帰されるそうで、少しお手伝いさせて頂きました!

・以前と感覚が違っていい
・吹きながら今の自分の音を聴いてあげる
ということを考えて吹くと、とても吹きやすくなった様子。響きも増してました!

加えて、音を出すために必要なことを明確にするために、今回は楽器を口まで持ってくることと、息を上に吐くということを意識して吹いてもらうと、さらに伸びのある音になりました(^^

ブランクから楽器を久しぶりに奏でるのが不安な時に、「以前と感覚が違うことを歓迎する」「今の自分の音を聴いてあげると」と取り組みやすいのかもしれません♪





森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

レッスンのご依頼について

2013年9月10日火曜日

音楽そのものを信頼する

2ヶ月ぶりにボディチャンス校長のジェレミーのクラスを受講しました。刺激的な学びが盛りだくさんでした!!

今日紹介するのは、中でも特に印象深かった内容。

クラシック音楽を演奏する人は、楽譜を見て、楽譜に書かれてる音符や記号、標語を見て演奏しますよね。

作曲家の残した音楽(楽譜)を見て、自分の解釈を通して演奏する。僕はそんなイメージを持っています。

しかし、僕はそれをする中で『歌わなくちゃいけない』『表情をつけなくちゃいけない』という考えが強くありました。
それは、まだ演奏に必要な技術を備えてない頃、楽譜に書いてある音を一つ一つ追いかけて鳴らすのに精一杯だったころに『もっと歌にして』『音楽にして』と教わったことがきっかけかもしれません。

だんだん『自分には歌心がないから歌わなくちゃ音楽にならない』『ただ楽譜を見て吹くだけではいけないんだ』と思うようになりました。最初のうちは『歌』を意識することでうまくいっていましたが、だんだん『歌おう』から『歌わなくちゃ』に変わって、それが緊張を引き起こして、ぎこちなくなってしまい、さらに『歌おう』として返ってガチガチの演奏になってしまっていたのです。
『歌心のない自分はなにかを付け加えなくちゃいけない』そんな捉え方をしていたためにプレッシャーも相当感じていました。

今回たまたま他の方が受講されているレッスンの中で表現に関する話題が出たのですが、ジェレミーからその方に向けられた言葉は、

『感情は、音楽が引き出してくれるから、書かれている音楽そのものを信頼して、楽譜に書いてある音楽を演奏してみて』

すごく深い言葉だなあ。これまでの自分の考えがひっくり返る言葉なのになんかすごく説得力ある。なんてことを思っているうちに、受講生の方が再び演奏する・・・

すごい!全然ちがう!
本当にびっくりしました。
一度目の演奏も素敵だったけど、ジェレミーと話してからの、二度目の演奏の方がとても表情豊かに聞こえる。音楽に身を任せているような印象を受けました!

重要なのは、二回目は『表情をつけよう』とするのをやめたこと。なのにさっきより表情豊かになってる。



もちろん、音楽を演奏する上で、歌うことや、表現の仕方を学んだり考えたり、探究することは大事なことだと思います。
『歌おう』『表情をつけよう』『表現しよう』と思いすぎて、あるいはそれらのことをしなくちゃいけないと思うことで、うまくいかないなあと感じたら、書いてある音楽そのものを信頼して、出したい感情は音楽が引き出してくれる、書いてある音楽をそのまま演奏してみると、自分の中にある心地いい音と歌が出てくるかもしれません(^^)




森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

レッスンのご依頼について
 

2013年9月3日火曜日

自分の望みを見つける

先日、高校のとき師事していた先生と金管五重奏の本番でした。
3日前のリハーサルの段階から極度に緊張して、リハでも音がうまく出なくなって、本番までの二日間、調子が悪くなり楽器を吹くことが苦しくなっていました。

「このままじゃ失敗する」「もう呼んでもらえなくなる」「本番行きたくないなあ」とか色々考え始めちゃって。

とは言っても、一度引き受けてリハにも参加した仕事、行くしかない。

こういう時こそ、アレクサンダーテクニークを使ってみようと、今まで教わったことやってみるけど、どれもうまくいかない。...

前日の夜、「やばい。ほんまどうしよ。」って思ったとき、ふと、
『何に対して、こんなに恐怖を感じてるんだろう』と考え始めて、自分の考えていることを一つ一つつまみ出して見ると、『失敗』という言葉に過剰に反応しました。そして『失敗しないようにアレクサンダーテクニークを使おう』としていたのですね!

自分の思考がある程度特定されていくと、『明日って金管五重奏やんね、金5って僕が1番好きなアンサンブルやんか!』と、ここですごい大事なこと思い出しました!

じゃあ単純に金管五重奏の中で演奏したい!演奏するためにアレクサンダーテクニーク使おうってやってみたら、さっき試していたプランもうまく働くようになってようやく自分らしい音になってきた
内心、間に合ってよかったとホッとしました(^^;;


今まで教わってきたことや、身につけてきたことは、自分のやりたいことのために得たもので、やりたいことのために機能するんですね!
それは、失敗しないために身につけたものではないということに改めて気づかされた体験でした。



 

森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

レッスンのご依頼について


2013年8月14日水曜日

音を出すために必要な力

前回の記事《自分にとって謎だった「アンブシュア」がすっきり解決》の中でも少し触れましたが、バジルさんのレッスンの中で何度か出てきた「マウスピースを口につけて、口を閉じて、息を吐く」というアイデア。このアイデアをレッスンを受けながら実際にやってみた結果、自分が感じたり考えたこと。

これは、金管楽器で音をだすために必要なことをとてもシンプルに説明したアイデアだと思いました。
金管楽器で音を鳴らすために必要なことは、
1.マウスピースと唇が接着している
2.上下の唇が閉じてある
3.息が閉じてある唇を押し開ける
4.息によって押し開けられた唇が再び閉じる
後は、3と4の繰り返し・・・がバズィングとなっているわけですね。

では、実際に1から順番にやっていきます。

マウスピースを自分の唇にくっつける・・・
やってみようとすると、これがなかなかできないことに気づきました!
やりたいことはマウスピースを唇につける、ただそれだけ。
唇、口周辺は何もしなくていいのです。
けれどマウスピースが触れるちょっと前、いや、楽器を構え始めるとき、いや、吹くと決めた瞬間にも唇と口周辺で何かが起こりました。いわゆるアンブシュアを作ろうとする動きです。
意識的にやってるわけではありませんが、マウスピースが近づいてくるのに反応して、またはこれから吹こうとする音を吹いているときの感覚を再現しようとして、口が少し強張るのを感じました。


しかし、これからすることは、マウスピースを唇にくっつけるだけ。
意識してやると簡単にできますね。でも新鮮な感覚でした笑
バジルさんの提案で、マウスピースを唇につけたまま適当にしゃべってみる。

これまた新鮮!でもいつもマウスピースが触れるときに起こるアンブシュアを作ろうと唇を強張らせることは必要ないのかも、と思える実験でした。


さあ、マウスピースを唇にただつけることができたら、次は口を閉じる。
ぎゅっと固めるのではなく、上下の唇を閉じ合わせる感じですね。

そしたら「息を吐いて!」ってなるのですが、これがどうにも不安でなりません。
口を閉じた状態で音が鳴るの??って疑っていました。
何回かそんな疑問を持ちながら息を吐いてみるけど、なかなか音が出ない。
とりあえずバジルさんのことを信用して笑、思いっきり息を吐いてみると、音が出ました!
周りで聞いていた方からは、音が伸びやかになった!とフィードバックを頂きました。


バジルさんからの質問がきっかけで、自分自身への問いかけが始まりました。
バジルさん「力を使うことを恐れていない?」

その通りでした。
いい音を出すために、体の力を抜こうとしていました。リラックスさせようと。
大学のときに、すごく力んで吹いてて、音程は上ずるし、音色は固くなるし、タンギングはつぶれるし、それらをよくしたくて、脱力しようとしていました。
力で吹くこと=悪いことってイメージをなんとなく持っていました。

でも実際にほんとに力を抜いて吹くと、吹けないんですね。でも力入れちゃいけない、抜かなきゃって思ってるから、混乱していました。


今回、「マウスピースを口につけて、口を閉じて、息を吐く」というアイデアをやってみて、音を出すためにどこにどれくらいの力が必要なのか、少し理解できました。
閉じてある唇を押し開ける息の力は、自分が思っていたよりも使う必要がありました。
そして息の力はどこが担っているかというと、主に腹筋や骨盤底筋群なんだと。
骨盤底の方は感じることが難しいですが、腹筋はかなり活発に働くようになってなかなか大変でした!でもお腹を使って吹くっていうのはこういうことなのか!ばっちり力使ってるやんって実感しました。そして息の力だけだと、唇はどんどん開いていっちゃうので、口を閉じ続ける力も必要。


高い音を出すためには、より口を閉じる力が必要で、それを押し開ける息の力も強くなります。
閉じ加減やそれに伴う息の強さは変わるけど、低い音を吹くときにも同じように、口を閉じる力とそれを押し開ける息の力は必要なんだと感じました。

余分な力を抜く、というのを、必要なとこにに力を使うに置き換えることができますね!
これからのアプローチが変わってきます♪


最後に「息の力で閉じてある唇を押し開ける」ことに関連して、バジルさんのクリニックのなかでこんな話がありました。

アンブシュアという言葉は、フランス語で「河口」を意味する言葉なんだそうです。
河口といえば、川の水の流れによって、周りの土地が削られて、河口の地形を形成していますね。
金管楽器のアンブシュアも、息が唇を押し開けた結果生まれるもので、アンブシュアの形を決めるのは「どんな息を吐いているか」で決まるそうです。
この話を聞いて、バジルさんのこのアイデアに、さらに説得力を感じました。







森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

レッスンのご依頼について

2013年8月13日火曜日

自分にとって謎だった「アンブシュア」がすっきり解決!

8月5日~8日にかけて、宝塚歌劇オーケストラトロンボーン奏者であり、僕の母校大阪音楽大学の講師をされている山下浩生先生主催の合宿が行われました。今回はゲスト講師として、アレクサンダーテクニーク教師のバジルクリッツァーさんのクリニックも開催され、両先生のレッスンをたっぷりと受講できるとても充実した合宿でした!

これから、合宿で学んだことをいくつかに分けて紹介していきたいと思います。

今回は、僕が個人的にとっても混乱してずっと悩んできたアンブシュアについて。
今までの考え方ががらりと変わりました・・・

では、アンブシュアについてどんなことを悩んでいたのかというと、
1.楽器を吹くときに左の頬がふくらむこと
2.マウスピースと唇がくっつく場所が左に寄っていること

大学に入ってから特に気になり始めて、なんとかこの二つを直さなきゃいけない。
直さないと上手くなれないんじゃないかという不安が常にありました。
実際にレッスンしてくださった先生方からも「膨らまさない方がいいよ」とアドバイスをもらっていたし、自分自身その方が息がストレートに楽器に入るんだからそうしなきゃいけないと思っていました。

しかし、アンブシュアというのは、悩みだしたらきりがないほど、様々な情報がありますね!
口を横に引いて、口を横に引いてはいけない、アンブシュアは中央に寄せて、唇はリラックスさせて、息で吹いて、唇で吹かないで、ほっぺたは膨らまないように、ほっぺた膨らむくらいたくさん息つかって、プレスしてはいけない、プレスは必要、などなど、これらは僕が実際に教わったことや当時調べて得た情報の一部です。
何が良くて何が悪いか、ではなく、これだけたくさんの情報があれば混乱してしまうのも無理ないですね。
もちろんこれらの情報が一度にいっぺんに入ってきたわけではありません。

今まで新しく得た情報をたよりに新しいアンブシュアをひたすら試して体に覚えさせようとしていました。
なぜその新しいやり方を身につけようとしたかについては、理由があります。
そのやり方を教えてもらって、試してみたその場面、その瞬間では、けっこう上手くいったからです。けれど僕は、アンブシュアについて「固定的な型」として捉えていました。そしてどんないかなるときでも、その同じ口の形で吹かなきゃいけないんだという考えがかなり根本的なレベルであったんです。それこそが安定したアンブシュアだと思っていました。


けれどその考えで、新しいアンブシュアを身につけようと、練習すればするほど音が出にくくなって、曲が吹けなくなっていったのでした。
そんな中、やはり演奏会で演奏する機会もあるわけで、その時だけはとにかく音が鳴るやり方で吹いていましたが、自分に課したアンブシュアのルールを破ったことの罪悪感を感じたり、演奏中にアンブシュアに関して「やってはいけないこと」がたびたび頭をよぎるようになったのです。
そこからアンブシュアについては迷宮入りになってしまっていました。

なのでここのところ、アンブシュアについて考えることはほとんど放棄していたのですが、
今回両先生のレッスンを受講することで、アンブシュアについての意識がまるで変わりました!!



合宿初日、山下先生のレッスンにて
練習曲を演奏しました。山下先生はぼくがアレクサンダーの勉強をしていることもご存知で、
話は体の使い方や演奏するために何を考えているかという話題に。
頬が膨らんでいることも話題にあがりました。
僕の演奏に対して、先生のフィードバックは、「必要な力(圧力)を頬にたまった空気の圧力で補っているように見える」というようなものでした。そして頬が膨らむのは「頬が演奏に参加していないから」なのかもしれないと。
たしかにそうかもしれない。前は頬が膨らまないようにほっぺを固くしようとしてて、それじゃあどうにも演奏どころじゃなくなってしまうから、あきらめて放棄していました。
だから頬も演奏に参加させるというのは、とても魅力的なお言葉でした。
そして、確かに必要な圧力を頬に溜まった息の圧力で補っていた感がありました。

次の日、実際に頬も演奏に参加しているという意識で楽器を吹くと、頬の膨らみが減って、それによって唇が外にに引っ張られることも少なくなったのでかなり楽になりました。


そんな二日目、バジルさんのレッスン
お昼過ぎにバジルさん到着。全体のクリニックは三日目に予定されていたので、この日はバジルさんが合宿場をぶらぶらするので質問したい人はなんでも聞いていいよ、という時間に。

そこで、他の方がレッスンしてもらっているときに、「マウスピースを口につけて、口を閉じて、さあ息吐いて!」というアイデアが出ました。
これ、バジルさんのブログの中でもよく出てくる話なんですが、よくわからないままでいました。
「口閉じちゃって音鳴るの?」って。
でもそのレッスンを受けてる方は、そのアイデアで吹いてみると音がまるで変わった!!響きがまして伸びやかになっていました。想像してた結果とはまるで逆・・・笑

これはぜひ自分でもやってみたいと、まずマウスピースをくっつけてみるんだけどこの時点で、すごく心地悪い。それで吹いてみても上手く音がでない・・・
それを見ていたバジルさんが「森岡くんは唇の左側にもマウスピースをプレスしてみたら?」という提案をくださいました。
やってみるとかなり違和感あるけど。今まで感じたことがないくらいすごくフィットした感覚で、すごく簡単に音が出た。
そこでバジルさんが「アンブシュアを真ん中にしようとしていない?」と。

そうなんです!だってそれが正しいアンブシュアと思っていたから!
本来真ん中であるべきものが自分は左にずれちゃってるんだって。
そう教えられたしそう信じてた。
で、常にそこまで意識してるわけじゃないんだけど、ほとんど無意識にマウスピースを口につけてから真ん中にずらそうとしたり、真ん中側にだけプレスをしていたんです。

つまりマウスピースの右側は唇とくっついていて、左側はあまりくっついていない状態。
左の頬が膨らむ原因もここにあるようでした。

今回バジルさんが新たな角度から教えてくれたのは「左よりなのが森岡君の自然なアンブシュアなのかもしれない」ということ。
この考え、なかったです。やはり真ん中が絶対に正しくて、ほんとは真ん中がいいんだけど左寄りでしか吹けない自分に後ろめたさがありました。

今回の両先生のレッスンで、
・ほっぺたは膨らませちゃいけない→どうしても膨らんじゃう→ほっぺたのことは放棄!
・左に寄ってしまったアンブシュアをほんとは真ん中にしなくちゃいけない

と考えていたのが、

・ほっぺたも演奏に参加させる
・僕のアンブシュアは左よりが自然。左側にも十分プレスしてあげよう

とても建設的な考え方になりました!!
ほんとにもう「悩み」を通りこして「謎」な領域だったんですがとてもすっきりしました。

次回は「マウスピースを口にくっつけて、口閉じて、息を吐く!」のアイデアで吹いてみると音がどんな風に変化したか。閉じてから息を吐くというのはどういうことなのか、まとめたいと思います♪



森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

レッスンのご依頼について


2013年7月28日日曜日

サラとのレッスン「探求すること」

一昨日と昨日、世界的なアレクサンダー教師サラバーカーさんのクラスを受講しました。
彼女の言葉で特に印象に残ったのは「正しくやろうとするのではなく、探求する」というものでした。

一日目のクラスで、演奏を見てもらうまでにサラと色々な動きをして自分の体について探求しました。けれどなんだかとても居心地が悪い・・・背中や首は痛くなっているし、周りでみんなが色々な発見をしてる中、自分は何も見つけられないしサラの言うとおりに動けているかがとても不安。

そんな時、他の受講生の方が「どうしても正しくやりたくなっちゃう」と。
そしてサラが「正しくやろうとするのではなく、探求しているの」とおっしゃいました。
それを聞いたとき、「これだ!!」って思いました。



正しくやらなあかん、とか間違えちゃいけないとかめちゃめちゃ考えていました!!!


だから、サラがただ「手をあげて」って言った時も、正しく美しく一番効率的な動きで、とか自分で注文を足していました。サラは「手をあげて」と言っただけだから、ただ手をあげればいいだけなのに、先に書いた注文があるから、背中や腰、お腹、足色んな場所で「手をあげる」ことには関係ない頑張りが生まれていることに気づいたんです。

そして例えば次は「手をあげる」という動作にアレクサンダーテクニークを使うので、頭が動けることを意識に含めながら手をあげるのですが、その時も僕は「正しくやらないと」という考えがあったので、姿勢がすごく気になってあちこちが頑張りはじめて、不必要な緊張を手放すことができなくなっていたのです。

そしてただ探求してみよう、結果的に何が起こるかわからないけど、首が自由になることを思ってただ手をあげてみる。さっきよりもずいぶん楽に腕があがりました。腕があがることで体全体もまた動くのがわかりました。普段、腕・胴体・脚・頭とかって別々の名前で呼んでるけど体っていうのはそれら全部がつながった一つのものなんだって改めて思いました。だから腕が動けば他の部分が動くのはごく自然なこと。それを今まで正しい姿勢をキープしようとしたり、腕を動かす→腕以外動かないようにって考えてたから、必要な体全体の動きを自ら止めていたのです。


これに気づくことができたのはかなり大きな収穫でした。
僕は楽器を演奏するときにも「正しく演奏しなければいけない」「間違えちゃいけない」と常に考えていたのです。もしかしたらこの考えはかえって演奏の邪魔になってることがあるはず。
「正しくやろうとする」から「探求してみよう」に変えるだけでこれだけたくさんの発見がありました。



動物の場合、バランスをとるには動き続けること

サラが水の入ったペットボトルを逆さにして床の上におきました。ペットボトルはそのまま床の上に立って止まっています。今度は逆さにしたペットボトルをサラの手のひらに置きました、バランスをとるために手を動かし続けないといけないのは容易に想像できますね。
人や動物の場合、バランスをとるために動き続けているんだそうです。その動きは決して止まることがないとサラは言っていました。
けれど例えば楽器を演奏する姿勢のことを考えたとき、まるで静止画のような正しい「型」をイメージしていました。そしてその姿勢をキープしようとなるべく動かないようにって思っていました。
でも実際は、楽器を持ち上げるとき、スライドを操作するとき、呼吸するときただ立っているとき全ての動きでバランスは変化して、体は微細に動き続けてバランスをとってくれています。
なので、「姿勢をキープする」というのを「バランスをとるために体が動き続けてくれているのを許してあげよう」って思うと、よりその微細な動きはスムーズになって結果的に、静かに美しく立っていることができるんだと思います。



「演奏しはじめるときに何がおこるかみてみましょう」

次は、実際にトロンボーンの演奏を見てもらいました。コンチェルトの冒頭を演奏してみました。
「出だしが上手くいかない。音が上手くでないんじゃないかと思うと怖い」とサラに相談。

サラ「じゃあ、演奏し始めるときにどんなことが起こるかみてみましょう!」
ここから探求が始まります。自分にとってかなり新鮮な言葉。今まで出だしが上手くいったか、失敗したかを判断するだけで、実際に何が起きているのか・自分が何をしているかなんて考えたことはほとんどありませんでした!

言われた通り、演奏し始めるまでに何が起きるか見てみる。
マウスピースが近づいてくるとどんどん怖くなってくる・・・

サラ「じゃあ今度は、マウスピースを口へもってくるところを見てみましょう。その時何か気がつきますか?」

やってみると、マウスピースを見て怖いと思ったとき、マウスピースを避けるように顔を後ろに引いている。その結果頭と首の後ろが固まっていた。

サラ「では、今度は演奏始めるときに怖いという感情はあるかもしれないけれど、マウスピースが近づいてきたら自分もマウスピースの方へ向かってみて」

確かに怖いという思いはずっとあるけど、マウスピースに自分も向かっていくと、よりすんなり演奏し始めることができました。

今までこの怖さがある限り絶対に上手くいかないと思ってたけど、実際には怖さがあっても演奏できるんだという自分にとって不思議な体験でした。



今まで「正しく演奏しなきゃいけない」は失敗しないようにって考えを生んで、失敗した時には「これじゃ駄目!」「こんな自分は駄目だ」って自分を否定してそこから考えが止まっていました。
こういう時って自分のことも周りのことも演奏も全然見えていません。

「正しく演奏しなくちゃいけない」「失敗しちゃいけない」って考えを取り除いてみて、ただ演奏してみて、自分の演奏をただ聴くだけ。意図したものと違ったならそこで何が起きてるんだろうか、よりよくしていくにはどんなアイデアがあるだろう?アイデアが浮かんだら、結果どうなるかわからないけど試してみる。で、ただそれを聴くだけ。っていう風に探求していくと、普段自分が「成功」か「失敗」の二択でしか判断してなかったのが、実はその中で色んなことが起きていることに気づきます。
そしてそれらはすべてより演奏をよくしていくためのヒントになります。

サラとのレッスンでは、そんな純粋な探究心や好奇心がとても刺激されました。








森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

レッスンのご依頼について

2013年7月22日月曜日

タテや音程を「合わせる」ためには

吹奏楽コンクールが近づき、中学・高校の吹奏楽部へ指導に呼んで頂く機会が多くなってきました。レッスンへ行くと、多くの団体が「出だし、タテを合わせよう。」「音程を合わせよう。」という意識を持って練習に取り組んでいて、そして実際には「タテが合わない」「音程が合わない」ことに悩んでいるようでした。

自分自身、学生の頃「タテ揃えて、音程合わせて!!」とさんざん言われてきました。
とにかく「合わせよう」と必死に練習しました。けどどうやったら合うのかわからなくて、「合ってない、ちゃんと合わせて!!」って言われるたびに「自分にはリズム感や音感が全然ないんだ、けどみんなと一緒にコンクールに出るためにはなんとかして合わせないと」って思うようになっていました。指示通りになんとか合わせようとすると、結果的には合う時があるんだけど自分の奏法や音色、音楽を犠牲にしているようでストレスを感じていました。


最近思うのは、演奏を聴いて合っているかずれているかの結果を演奏者に伝えることは必要だけど、「合わせなさい」という指示は、具体的にどうすればいいか説明できていないし、演奏者にとってストレスになってそれが演奏の邪魔になってしまうことがあるのではないか、ということです。
結果的に合わなかったり、合ったとしても流れがぎこちなかったり音が固くなってしまうことが多いように思います。



上に書いた通り「合っているか、ずれているか」というのは音を出した結果ですね。
結果的に「合わせる」ためには、どうすればいいか手段を考える必要があると思います。

では、どうすれば結果的に「合う」のか。
一つは演奏者がイメージしているテンポやリズム、音程がバンド全体で共有されている。
もう一つはイメージしているテンポ、リズム、音程をそのまま演奏できる技術があること。
この二つの要素が成り立てば結果的に「合う」ことは目に見えますね!

一つ目に関しては、実はほとんどの学校でできていることが多いと思うんです。
だって学校の部活動では一つの曲にかける練習時間はとても長いのですから!
本番までに何度も合奏したり、パート練習したり、個人練習したり。メトロノームを使ったりCD聴いたりピアノやハーモニーディレクターで弾いてみたり。
特にコンクールになればほんとに練習する量は多いので、自然とテンポやリズム、音程のイメージはできてくるし、毎日同じメンバーで練習しているので共有されやすいと思います。
けれど、「ずれてるから合わせなさい!」という言葉を聞いているうちに、せっかく自分の中にできてきているイメージが信用できなくなり、何を頼りに演奏していいかわからなくなってしまうことがあります。

もしずれる原因が二つ目の「イメージしたリズム・音程を演奏する技術」がまだ確立されてないことにあるのなら、「なんであわせられないの!?」という指導は、原因である技術とは別の、演奏者が持っているテンポ・リズム・音程のイメージを否定してしまうことになる可能性があります。これは危険だと思います。中学や高校だと楽器を始めたばかりの生徒が多いので、原因として技術面の方が多いと思いますし、技術の習得に時間がかかることは自然なことです。



では、「合わせよう」に代わって「自分が思う、演奏したいタイミング・音程を演奏してみる」とどうでしょう。

人によっては「合わせる」こととは正反対に聞こえるかもしれません。
でも、先ほどの「合う」ための要素が演奏者の持つテンポ・リズム・音程のイメージが共有されていることだとしたら、まずは演奏者ひとりひとりが、自分が思う/演奏したいテンポ・リズム・音程をより意識して演奏することが一つ目のステップだと思います。
「共有されている」という部分は普段の合奏やパート練習の中で育まれていることが多いので、それぞれが演奏したいタイミングで演奏した方が結果的に合いやすいことが多いです。休憩時間や下校時間に生徒たちが課題曲を歌ってるのを聴いたときほんとにそう思いました♪

逆にもし僕がそうだったように自分のイメージしているテンポ・リズム・音程を自分が否定してしまっていたら共有することはできません。

もし「自分が演奏したいタイミング・音程」を演奏してみてタテや音程がバラバラにずれたなら、これも歓迎すべきことです!それだけ持っていたリズムや音程のイメージが違っていたことがわかったのですから。
そうであれば、新しいリズム・音程のイメージに書き換えてもう一度演奏したいように演奏してみてください。
もし、原因が技術面にあることに気がつけば、そのテクニックについてアドバイスしてもう一度演奏したいように演奏してもらいましょう。


このアイデアを使うと結果的に合いやすくなるし、音や音楽も変わります。
なぜなら、自分の演奏したいリズム・音程・音をイメージする方が「合わせなくちゃいけない/ずれちゃいけない」よりも、自分自身の体への指示もより具体的になるからです。





森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

レッスンのご依頼について

2013年7月18日木曜日

「頭」が演奏に与える影響

前回のブログで、姿勢が呼吸に影響すること、頭が脊椎の上でバランスよく乗っていなかったら、体は頭を支えるためにエネルギーを使い、演奏するために不必要な力を使ってしまうということを説明しました。 (前回の記事はこちら)

では、頭が脊椎の上でバランスよく乗ってくれていると、体は演奏するために能力を発揮してくれるようになるのですが、頭が脊椎の上でバランスよく乗っているということはどういうことなのでしょうか。
今回は一人でもちょこっと試せるアレクサンダーテクニークをご紹介します♪


まず、頭が脊椎(背骨)の上に乗っかっている場所はどこにあるのでしょう。

言い換えると、「どこから上が頭ですか?」という質問になります。
実は、僕が初めてアレクサンダーテクニークのレッスンを受けたとき、この質問をされました。
僕はあごの下に手を置いて「ここから上が頭です。」と答えました。
しかし、実際の頭はもっと上にありました!!!


僕が「ここから頭だ」って信じていたのは、あごのことで、まだ「頭」ではありません。
あごの骨は頭からぶら下がってるように付いてる骨です。あごの骨が頭と繋がっている関節は、耳の穴の前あたりにあります。実際に耳の穴の前を触りながら口をパクパクすると触っているあたりが動きます。「頭」が思っていたよりも上にいることが少しずつ見えてきますね・・・!

では、本題の「頭が脊椎の上に乗っかっている場所」はどこかというと、耳の穴・目と同じくらいの高さにあります!
下の写真をご覧ください。







脊椎が耳の穴の高さまで来ていてその上に頭(頭蓋骨)が乗っている様子がよくわかります。
みなさんの認識と違いはありましたか?
僕は初めてこの模型を見たときかなり衝撃を受けました。だって「あごから上」と「耳の高さ」ではほんとに全然違いますよね!!
頭の場所がわかったと同時に、脊椎ってこんなに長いんだと思いました。
そう思うとなんだか体がじんわり楽になってきませんか??


頭が脊椎に乗っかっている場所も関節です!つまり、動けます!

上の写真を見て、実際に頭と脊椎の接する部分は耳の穴と同じ高さにあることがわかりましたね。そこは関節になっているんです。

では、少し実験してみます。
1.「頭と脊椎の接する部分は関節だから動けるんだ、止めてなくていいから自由にしてあげよう」って思うと呼吸はどうなりますか?

2.今度は逆に「頭と脊椎の関節を固めて動けないようにしよう」と本気で思ってみてください。呼吸はどうなりますか?さっきと比べて吸う量・吐く量はどう変化しますか?

3.さて、もう一度「頭を固めるのをやめて自由にしてあげよう」と思ってみてください。
すると呼吸はどうなりますか?


同じ実験を手を上げたり、立ったり座ったりの動作に置き換えてやってみるとどうでしょう?
やりやすさに変化はありますか?
こうした実験をしてみると、頭のことを考えるだけで呼吸は腕・足の動きに影響がでることがわかります。つまり、頭の動きが全身の動きに大きな影響力を持っているのですね!

この頭の動きが全身の動きに影響を与えているということが、F.M.アレクサンダーさんが発見した体のシステムなのです。(アレクサンダー用語でプライマリーコントロールといいます)





これは楽器を演奏する人にとって、とっても便利なシステムです!

だって演奏するときに、頭のことを意識にいれてあげるだけで、胴体も腕も足も、体全部がこれから始まる演奏のために機能してくれるのですから!


では、実際に頭のことを意識に入れながら楽器を演奏してみましょう♪
演奏するのは曲のフレーズでも、音階でも、一音でもなんでも構いません。

演奏したい曲/音階/音が決まったら、「頭は耳や目と同じ高さで脊椎の上に乗ってるんだったなー」「そこは関節になってて動けるから、止めてなくていい、自由にしてあげよう」って思いながら、さあ演奏してみましょう!!

どうでしょうか!?
普段と比べて音はどうですか?演奏しやすさはどうでしょう?


もし何も変わらないという場合は、演奏を始めるまでの動きを普段より意識して観察してみてください。実は「頭が固まっちゃうポイント」は人それぞれですがいくつかあります。

・楽器を持ち上げ始めると、上半身が後ろに反り始めませんか?
・マウスピースが口に近づいてくるとき、顔が前に向かっていきませんか?またはちょっと顔を後ろに引いていませんか?

もしそうしていた場合、頭はどうなっているでしょう?さっきの実験でやったように固まっていませんか?

では、もう一度「頭が耳とおんなじ高さで脊椎の上に乗っている」「頭と脊椎の関節を自由にしてあげよう」と思いながら、楽器の吹き口(マウスピース)を自分の唇へ持ってきましょう。
もし体を反りたくなったり、マウスピースに向けて顔を前に持っていきたくなっても、その都度頭のことを思い出してあげてください。そうして最後まで自分の口に楽器を持ってきましょう。


そうして演奏してみると、どうでしょうか??

もし何か変化があったならぜひどんな変化があったか教えてください♪







森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

レッスンのご依頼について


2013年7月6日土曜日

呼吸と姿勢の関係

二週間にわたってボディチャンスで呼吸のクラスを受けて、自分でも呼吸について考える時間があったので、学んだものを少しずつまとめていこうと思います。

今回は呼吸と姿勢の関わりについて。


まず、呼吸をするとき、体はどんな動きをするのでしょうか。
僕自身まだ理解が深まっていないので簡潔に書きますが、
『息を吸うときは、胸郭が(上や外方向)に広がり、横隔膜が下にさがることで、肺のスペースが広くなり、肺の中の気圧が外気圧よりも低くなるから空気が入ってきます。』
『息を吐くときは、上の動きをやめれば肺の中の気圧が、外気圧より高くなり空気は出て行きます。』

・胸郭は胸椎と肋骨と胸骨によって肺と心臓を囲むカゴのような形をしていますが、肋骨と胸椎(背骨)の付け根には間接があって、肋骨と胸骨がくっついてる部分は軟骨になっているので、胸郭が動くことは可能です。胸部筋群がこの動きをサポートしています。

・横隔膜は、肺・心臓と、他の臓器を上下に分けるように、胸郭内部にドーム状に存在します。
吸う時はこの横隔膜が水平になり内臓が下方向に押し下げられ、吐くときには横隔膜がもとのドーム状へ戻ります。管楽器奏者が息を吐くときには特に腹筋や骨盤底筋群のサポートで、内臓を押し上げるので、空気を送り出す圧力が増加します。


つまり、呼吸は体全体で行っている動きなんですね!
今まで知識として少しは知っていたし、昔からお腹を意識してと指導されてきてはいましたが、
やっぱり息を吸う、吐くってなると、なんか口・鼻や喉、気管あたりで「吸い込む」「吐き出す」って
イメージを持っていました・・・


「口・鼻はただの穴。喉や気管はただの管」なんだそうです。
頑張ったって息を吸ったり吐いたりする動きはしてくれません。
もちろん息の通り道なので、感じることはできますが。

上に書いた通り、体全部が動くから空気が入ってきて、体全部が動くから空気が出て行くわけです。
だから姿勢と呼吸は関わっているんですね。



では、演奏するときの姿勢が呼吸にどう影響しているのか。

例えば演奏するとき、上半身が後ろへ反り返っている。
自分を含めてですが、よくこういう姿勢で演奏する人を見かけます。


人の頭はおおよそ5kgも重さがあり、その頭を背骨の一番上に乗せて生活しています!!
頭が背骨の上でバランスよく乗っていればいいのですが、バランスが悪いと脊椎と体全体に下向きのプレッシャーをかなり与えます。
上半身が後ろに反り返っていると、頭は背骨の上にバランスよく乗っていられるのは難しいですね。実際やってみると演奏してなくてもかなり辛くて呼吸もしにくいです。
全身に力が入って体が固まってしまいます。
なぜなら、とっても危険な状態だからです!もし上半身が後ろに反った状態で全身の力を抜いてしまえばたちまち倒れて頭を打ってしまいますね。
体は自分を守るために、傾いた頭を支えるために頑張らざるをえないわけです。

ということは、楽器を演奏するときは体全部・とくに胴体には呼吸のサポートをしてほしいのにその筋肉たちは体を支えるためにエネルギーを使うことになり、呼吸の仕事ができないわけです。

そんな状態のまま呼吸を深くしたり、脱力しようとしたりしても、体には倒れないために頑張る必要があるので、できないんですね。


また、頭が前に下がってしまう場合も、同様に下向きのプレッシャーをかけてしまい胸郭の動きが抑えられてしまい呼吸しにくいです。また腕には楽器の重さ+頭の重さ5kgがのしかかってしまうのでかなり辛いです。


以上のように姿勢、とくに頭のバランスが、呼吸に与える「良くない影響」について考えてみました。
でも、反対に頭が背骨の上でバランスよく乗り続けてくれれば、体は演奏するためにその能力を発揮できるようになります・・・!
そんなことを考えるとなんだかワクワクしてきますね!!

今日整理できたのはここまでで、また次回に続きます。







森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

レッスンのご依頼について

 

2013年7月1日月曜日

「心配」が演奏プランに組み込まれていた!



先日ボディチャンス校長のジェレミーのレッスンでこんなことに気づかせてもらいました。

僕は演奏し始める直前に『ちゃんとできるかな?』『新しいプランは上手く使えるかな?』
『音が当たらないんじゃないか』『音程おかしくないか?』『息は足りるの?』などなど、ほんの一瞬で様々な「心配」をしていました。


この『ちゃんとできてるかな?』っていう心配が音を出すためのプロセスの一部になっていたようです。そして、よりよい演奏をするために新しいプランを用意しても、そのほとんど無意識に起こる「心配」が前のプラン(習慣)に引き戻してしまうんだそうです。
吹く直前に上に書いたような心配をしていることは自覚していましたが、これも習慣なのかーと改めて思いました。


けれどいくら心配しても、演奏してみなきゃわかんないんです!
当たり前ですがちゃんと吹けたかも、新しいプランが使えたかも、音があたったかも、
音程が合っていたかも、息が足りたかも、演奏した後でないと分からないし、感じることができないんですね。

つまり演奏する前から、ちゃんと吹けている感覚、音がキレイに当たる感覚、気持ちいい音程で吹けている感覚を呼び起こそうとしていたけど、そんなことは不可能なのでした。


このクラスで印象に残っているのは、何かをするとき、考えて→動いて→感じる というサイクルがあるのですが、上手くいってない時は、考えて→感じて→動く と順序が逆になっているということ、
この説明と自分の習慣を照らし合わせるとかなり納得できました。
ジェレミーが『感覚は過去(起こったことの結果)を教えてくれるもので、未来を教えてくれるものじゃない』と言っていたのも印象的でした。




また、演奏する直前に先ほど書いた心配が浮かんだ時、「音をはずしている自分」「息が足りなくなって苦しそうに演奏する自分」「音程が合わなくて気まずい雰囲気」を想像してしまいがちです。
でも、この想像に出てくる自分は、まさに今までの古いプラン(習慣)を使っている自分なので、古い習慣に引き戻されても仕方ないですね。



ここまで納得できたのですが、どーしても「心配」を手放すことができないとジェレミーに相談しました。

すると、「これは絶対に負けることのないギャンブルなんです」と。

よく意味がわかりません笑

続けてジェレミーが
「負けたときは、前の習慣に戻ったとき。
新しいプランを使うか、前の習慣に戻るか、それだけ。
だから負けようがないんです。」
「同じ感覚は絶対にやってこない。
同じプランを使ったとしても、結果やってくる感覚は毎回違う。」

この話を聞いてずいぶん気持ちが楽になったし、
常に安定した同じ感覚を感じようとしていたことに気づきました。
新しいプランを使うか、前の習慣に戻るか、そして新しいプランを使ったとしても結果(感覚)
はいつも違っていいんだと思えることで、演奏する直前の「心配」がずいぶん減りました♪

この話の直後演奏しましたが、とてもラクで楽しかった!!・・・
見ていた方も、「目が笑っていたよ」と言ってくださいました。
昔は「どーしてそんな怖い顔で演奏するの?」と言われていたので(笑)、とても新鮮で嬉しいお言葉でした!






2013年6月28日金曜日

音楽を演奏するためのブレス

今日はボディチャンス教師養成クラスで
アレクサンダーテクニークのレッスンを受講しました。

レッスンが終わってから、僕のレッスンを見ていた
オーボエ奏者の方とお話している時のこと。
ブレスに関する考え方が大きく変わりました。

僕のテーマは、
「音楽を演奏するための自然なブレス」を
探究すること。




クラスで演奏したのは
童謡ふるさとの一節。

Vうさぎおーいし(V)かのやまーV
こぶなつーりし(V)かのかわー

Vが意識的に決めてブレスをした箇所で、
(V)が息が持たず思わずブレスした箇所です。

この演奏を聞いていたオーボエ奏者とクラリネット奏者の方から、
「Vのブレスは不自然で、(V)の時はとても自然でうまく吸えていたよ。」
というフィードバックをもらいました。
自分で演奏していても
感覚的に同じ事を感じていました。

この二つのブレスにはこんな違いがあります。
「(V)のブレスは、フレーズを吹き続けるために空気の補充が必要で吸った」
「Vのブレスは、ここでブレスをとると決めたから吸った」

(V)ではその先の音楽を演奏し続けることが目的でしたが、
Vでは息を吸うことに意識が集中していたため、
たくさん息を吸うことが目的になっていました。





お話していたオーボエ奏者の方の提案で、
「息を吸わないで」演奏してみるということを
やってみました。

・・・やってみましたが、文字通りそれをすることは
できませんでした。

今までのように「意識的に息を吸うこと」はやめても
音楽を演奏することを考え、実行するために
楽器を口に運んでくる過程で、既に身体は息を吸いはじめました。

そのまま演奏すると、息が足らなくなるような感じがしました。
でも、結果は楽に、演奏できました。
音がよく響いているし発音も無理なくクリアで、
音楽にも流れがありました。

この時、今まで自分が何をしていたのか理解しました。
そしてVと(V)の違いも・・・

僕は今まで「音楽を演奏することを考え実行するときに、既に空気を吸うことも
始まっていたが、楽器を構えてから大量の息を吸おう」としていたようです。

(もしかすると、そのために演奏をするために
始まっている吸気を止めていたのかもしれません。)





森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ
プロフィール



























 

2013年6月26日水曜日

健やかにブログを始めました。

6月から、大阪梅田にあるBODYCHANCEというスタジオの、アレクサンダーテクニーク教師養成コースへ入学しました!このブログでは、そこでの学びや発見、自分自身の変化などについて書いていきたいと思います。


このブログのタイトルの「健やかにトロンボーンを吹く」は、
今、僕自身が本当に望んでいることです!
アレクサンダーテクニークをトロンボーンの演奏に応用することで、
心身ともに健康的に上手くなっていく方法を探究しています。


なぜ「健やかに」なのかというと、

僕自身が、上手くなりたい一心で練習を重ねた結果、
背中や腰が痛くなって、ひどい肩こりと頭痛に悩まされ
練習すればするほど体は固まって音が出なくなり、
本番ではあがってしまい実力を出せず、
自信を失くして、自分を否定してしまう。
そんな悪循環を大学の4年間ぐるぐると繰り返していました。

その時は、何故上手くなれないのか、どうやったらこの悪循環から
抜け出せるのか、いくら考えてもわかりませんでした。

大学を卒業する頃には、心も体も疲れ果て、ほとんど演奏できなくなってしまい
音楽を続ける気力を失いかけていました。
それでも音楽を続けたいという気持ちはあり続けました・・・!
しかし心も体も、楽器を吹くことを考えるだけで苦しくなります。
続けるには自分に無理なく、体の声を聞いてやる必要がありました。

そんなことを考えているときに出会ったのが、
「アレクサンダーテクニーク」でした。
(アレクサンダーテクニークは、体の効率的な使い方によるパフォーマンスの向上や、
その人の才能を守り育てる心身教育法として音楽学校や演劇学校などで取り入れられています。)
少し調べているだけで、
「自分の考えていることが、直接演奏に影響したり、上達を阻んでいる。」
「トロンボーンの演奏に不必要な力を使っている。」
ことがわかりました。

実際に、「できないから練習しなきゃいけない」などのネガティブな発想で練習していたし、
呼吸や奏法についても多くの誤解や混乱がありました。
アレクサンダーテクニークを使ってそうした思考の習慣を変えたり
トロンボーンの奏法について、より体の現実にフィットしたやり方を見つけることが
できると思います。

というわけで、アレクサンダーテクニークを学んで、
健やかにトロンボーン吹いていきます♪



プロフィール
森岡尚之 もりおか なおゆき
出身:大阪府高槻市
中学からトロンボーンを始め、
大阪音楽大学を卒業
2013年6月よりBODYCHANCEアレクサンダーテクニーク教師養成コースへ入学
演奏活動の他に、バンド指導やレッスンも行っている。