2013年7月28日日曜日

サラとのレッスン「探求すること」

一昨日と昨日、世界的なアレクサンダー教師サラバーカーさんのクラスを受講しました。
彼女の言葉で特に印象に残ったのは「正しくやろうとするのではなく、探求する」というものでした。

一日目のクラスで、演奏を見てもらうまでにサラと色々な動きをして自分の体について探求しました。けれどなんだかとても居心地が悪い・・・背中や首は痛くなっているし、周りでみんなが色々な発見をしてる中、自分は何も見つけられないしサラの言うとおりに動けているかがとても不安。

そんな時、他の受講生の方が「どうしても正しくやりたくなっちゃう」と。
そしてサラが「正しくやろうとするのではなく、探求しているの」とおっしゃいました。
それを聞いたとき、「これだ!!」って思いました。



正しくやらなあかん、とか間違えちゃいけないとかめちゃめちゃ考えていました!!!


だから、サラがただ「手をあげて」って言った時も、正しく美しく一番効率的な動きで、とか自分で注文を足していました。サラは「手をあげて」と言っただけだから、ただ手をあげればいいだけなのに、先に書いた注文があるから、背中や腰、お腹、足色んな場所で「手をあげる」ことには関係ない頑張りが生まれていることに気づいたんです。

そして例えば次は「手をあげる」という動作にアレクサンダーテクニークを使うので、頭が動けることを意識に含めながら手をあげるのですが、その時も僕は「正しくやらないと」という考えがあったので、姿勢がすごく気になってあちこちが頑張りはじめて、不必要な緊張を手放すことができなくなっていたのです。

そしてただ探求してみよう、結果的に何が起こるかわからないけど、首が自由になることを思ってただ手をあげてみる。さっきよりもずいぶん楽に腕があがりました。腕があがることで体全体もまた動くのがわかりました。普段、腕・胴体・脚・頭とかって別々の名前で呼んでるけど体っていうのはそれら全部がつながった一つのものなんだって改めて思いました。だから腕が動けば他の部分が動くのはごく自然なこと。それを今まで正しい姿勢をキープしようとしたり、腕を動かす→腕以外動かないようにって考えてたから、必要な体全体の動きを自ら止めていたのです。


これに気づくことができたのはかなり大きな収穫でした。
僕は楽器を演奏するときにも「正しく演奏しなければいけない」「間違えちゃいけない」と常に考えていたのです。もしかしたらこの考えはかえって演奏の邪魔になってることがあるはず。
「正しくやろうとする」から「探求してみよう」に変えるだけでこれだけたくさんの発見がありました。



動物の場合、バランスをとるには動き続けること

サラが水の入ったペットボトルを逆さにして床の上におきました。ペットボトルはそのまま床の上に立って止まっています。今度は逆さにしたペットボトルをサラの手のひらに置きました、バランスをとるために手を動かし続けないといけないのは容易に想像できますね。
人や動物の場合、バランスをとるために動き続けているんだそうです。その動きは決して止まることがないとサラは言っていました。
けれど例えば楽器を演奏する姿勢のことを考えたとき、まるで静止画のような正しい「型」をイメージしていました。そしてその姿勢をキープしようとなるべく動かないようにって思っていました。
でも実際は、楽器を持ち上げるとき、スライドを操作するとき、呼吸するときただ立っているとき全ての動きでバランスは変化して、体は微細に動き続けてバランスをとってくれています。
なので、「姿勢をキープする」というのを「バランスをとるために体が動き続けてくれているのを許してあげよう」って思うと、よりその微細な動きはスムーズになって結果的に、静かに美しく立っていることができるんだと思います。



「演奏しはじめるときに何がおこるかみてみましょう」

次は、実際にトロンボーンの演奏を見てもらいました。コンチェルトの冒頭を演奏してみました。
「出だしが上手くいかない。音が上手くでないんじゃないかと思うと怖い」とサラに相談。

サラ「じゃあ、演奏し始めるときにどんなことが起こるかみてみましょう!」
ここから探求が始まります。自分にとってかなり新鮮な言葉。今まで出だしが上手くいったか、失敗したかを判断するだけで、実際に何が起きているのか・自分が何をしているかなんて考えたことはほとんどありませんでした!

言われた通り、演奏し始めるまでに何が起きるか見てみる。
マウスピースが近づいてくるとどんどん怖くなってくる・・・

サラ「じゃあ今度は、マウスピースを口へもってくるところを見てみましょう。その時何か気がつきますか?」

やってみると、マウスピースを見て怖いと思ったとき、マウスピースを避けるように顔を後ろに引いている。その結果頭と首の後ろが固まっていた。

サラ「では、今度は演奏始めるときに怖いという感情はあるかもしれないけれど、マウスピースが近づいてきたら自分もマウスピースの方へ向かってみて」

確かに怖いという思いはずっとあるけど、マウスピースに自分も向かっていくと、よりすんなり演奏し始めることができました。

今までこの怖さがある限り絶対に上手くいかないと思ってたけど、実際には怖さがあっても演奏できるんだという自分にとって不思議な体験でした。



今まで「正しく演奏しなきゃいけない」は失敗しないようにって考えを生んで、失敗した時には「これじゃ駄目!」「こんな自分は駄目だ」って自分を否定してそこから考えが止まっていました。
こういう時って自分のことも周りのことも演奏も全然見えていません。

「正しく演奏しなくちゃいけない」「失敗しちゃいけない」って考えを取り除いてみて、ただ演奏してみて、自分の演奏をただ聴くだけ。意図したものと違ったならそこで何が起きてるんだろうか、よりよくしていくにはどんなアイデアがあるだろう?アイデアが浮かんだら、結果どうなるかわからないけど試してみる。で、ただそれを聴くだけ。っていう風に探求していくと、普段自分が「成功」か「失敗」の二択でしか判断してなかったのが、実はその中で色んなことが起きていることに気づきます。
そしてそれらはすべてより演奏をよくしていくためのヒントになります。

サラとのレッスンでは、そんな純粋な探究心や好奇心がとても刺激されました。








森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
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