2013年7月22日月曜日

タテや音程を「合わせる」ためには

吹奏楽コンクールが近づき、中学・高校の吹奏楽部へ指導に呼んで頂く機会が多くなってきました。レッスンへ行くと、多くの団体が「出だし、タテを合わせよう。」「音程を合わせよう。」という意識を持って練習に取り組んでいて、そして実際には「タテが合わない」「音程が合わない」ことに悩んでいるようでした。

自分自身、学生の頃「タテ揃えて、音程合わせて!!」とさんざん言われてきました。
とにかく「合わせよう」と必死に練習しました。けどどうやったら合うのかわからなくて、「合ってない、ちゃんと合わせて!!」って言われるたびに「自分にはリズム感や音感が全然ないんだ、けどみんなと一緒にコンクールに出るためにはなんとかして合わせないと」って思うようになっていました。指示通りになんとか合わせようとすると、結果的には合う時があるんだけど自分の奏法や音色、音楽を犠牲にしているようでストレスを感じていました。


最近思うのは、演奏を聴いて合っているかずれているかの結果を演奏者に伝えることは必要だけど、「合わせなさい」という指示は、具体的にどうすればいいか説明できていないし、演奏者にとってストレスになってそれが演奏の邪魔になってしまうことがあるのではないか、ということです。
結果的に合わなかったり、合ったとしても流れがぎこちなかったり音が固くなってしまうことが多いように思います。



上に書いた通り「合っているか、ずれているか」というのは音を出した結果ですね。
結果的に「合わせる」ためには、どうすればいいか手段を考える必要があると思います。

では、どうすれば結果的に「合う」のか。
一つは演奏者がイメージしているテンポやリズム、音程がバンド全体で共有されている。
もう一つはイメージしているテンポ、リズム、音程をそのまま演奏できる技術があること。
この二つの要素が成り立てば結果的に「合う」ことは目に見えますね!

一つ目に関しては、実はほとんどの学校でできていることが多いと思うんです。
だって学校の部活動では一つの曲にかける練習時間はとても長いのですから!
本番までに何度も合奏したり、パート練習したり、個人練習したり。メトロノームを使ったりCD聴いたりピアノやハーモニーディレクターで弾いてみたり。
特にコンクールになればほんとに練習する量は多いので、自然とテンポやリズム、音程のイメージはできてくるし、毎日同じメンバーで練習しているので共有されやすいと思います。
けれど、「ずれてるから合わせなさい!」という言葉を聞いているうちに、せっかく自分の中にできてきているイメージが信用できなくなり、何を頼りに演奏していいかわからなくなってしまうことがあります。

もしずれる原因が二つ目の「イメージしたリズム・音程を演奏する技術」がまだ確立されてないことにあるのなら、「なんであわせられないの!?」という指導は、原因である技術とは別の、演奏者が持っているテンポ・リズム・音程のイメージを否定してしまうことになる可能性があります。これは危険だと思います。中学や高校だと楽器を始めたばかりの生徒が多いので、原因として技術面の方が多いと思いますし、技術の習得に時間がかかることは自然なことです。



では、「合わせよう」に代わって「自分が思う、演奏したいタイミング・音程を演奏してみる」とどうでしょう。

人によっては「合わせる」こととは正反対に聞こえるかもしれません。
でも、先ほどの「合う」ための要素が演奏者の持つテンポ・リズム・音程のイメージが共有されていることだとしたら、まずは演奏者ひとりひとりが、自分が思う/演奏したいテンポ・リズム・音程をより意識して演奏することが一つ目のステップだと思います。
「共有されている」という部分は普段の合奏やパート練習の中で育まれていることが多いので、それぞれが演奏したいタイミングで演奏した方が結果的に合いやすいことが多いです。休憩時間や下校時間に生徒たちが課題曲を歌ってるのを聴いたときほんとにそう思いました♪

逆にもし僕がそうだったように自分のイメージしているテンポ・リズム・音程を自分が否定してしまっていたら共有することはできません。

もし「自分が演奏したいタイミング・音程」を演奏してみてタテや音程がバラバラにずれたなら、これも歓迎すべきことです!それだけ持っていたリズムや音程のイメージが違っていたことがわかったのですから。
そうであれば、新しいリズム・音程のイメージに書き換えてもう一度演奏したいように演奏してみてください。
もし、原因が技術面にあることに気がつけば、そのテクニックについてアドバイスしてもう一度演奏したいように演奏してもらいましょう。


このアイデアを使うと結果的に合いやすくなるし、音や音楽も変わります。
なぜなら、自分の演奏したいリズム・音程・音をイメージする方が「合わせなくちゃいけない/ずれちゃいけない」よりも、自分自身の体への指示もより具体的になるからです。





森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

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