2013年12月10日火曜日

楽器の構えを、ラクに

僕は楽器を吹き続けていると、楽器を持っている手に力が入って疲れたり痛くなることがよくあります。また、学校の吹奏楽部などへ指導へ行くと、同様の悩みを持っていたり、無意識のうちに楽器を強くぎゅっと握っている生徒さんをよく見かけます。


楽器を持つためにどれくらいの力加減で持っているか、考えたことはありますか?
手や腕に力が入りすぎているという実感を持っている方は少なくないかもしれません。
楽器を持ち上げて、歌口(マウスピース)を口に持ってくるという動きは、演奏するために必要不可欠な動きです。
つまりブレスやアンブシュア、タンギングについて考えるのと同じくらい、考える価値のあることだと思うんです!



楽器をどれくらいの力で持つか考えてみる


手元にペンや紙(落としても大丈夫なもの)があれば試してみてください。

①片手でそれを持ちます。
②そして、それが手を離れて(机か床、もしくはもう片方の手のひら)に落ちるまで、ゆっくりと持っている手を緩めていってください。
③持っていたものが落ちたら、また同じほうの手でそれを持ちます。
④今度は、それが手を離れて落ちる手前まで、ゆっくりと持っている手を緩めてください。

落ちる手前までなので、今度は落ちませんね。
ということは、最初よりも手を緩めていても、それを持ち続けられるのです。
「持つ」ための力加減に自由な選択肢があることがわかりました。

さて、では楽器をどうやって持ちましょう。
必要な条件としては、楽器が手を離れて落ちなければ十分だと考えます。
楽器を手に取り、手をおろした状態でその楽器の重さを感じて見ましょう。

私たちは物を持つとき、無意識に持つ前から、持つために必要な力を推測し準備しています。
人のかばんや、中身のわからないダンボールが思いのほか重くて(軽くて)びっくりした経験はありませんか?それは、そのものの見た目や自分の経験から勝手に重さを推測しているからです。
普段から手にしている楽器ならなおさら習慣的に、持つための力を準備しています。

けれど力は必要になるときに、必要な分使えばいいのです。
持つ前から、持つために力を入れる必要はありません。

なので、まず楽器の重さを感じて、それを持ち続けるために必要な力で持ってみてください。
(楽器が手を離れ、床に落ちなければOKです!)
思いのほか力を使ってないという感覚があるかもしれません!


そして自分の口まで持ってくるのは、腕の動き

手で楽器をもつところまで説明しました。次は楽器の歌口(マウスピース)を自分の口まで持ってくるという、「楽器を持ち上げる」動きについて。

楽器を持ち上げるとき、肘(ひじ)が大活躍します!!
実はこの肘、案外忘れがちになることが多いようです。
手をおろしているところから、肘だけを折りたたむように曲げてみるとそれだけで胸のあたりまで手が届きます。楽器を口まで持ってくるという仕事の大部分を担っています。
もちろん楽器を持ち上げ、マウスピースを口まで持ってくるには、腕全体が動きます。
ちなみに腕全体というのは、鎖骨・肩甲骨も含まれます。なので肩のあたりも動きますよ!

なので楽器の歌口(マウスピース)を口まで持ってくるために、
手は必要な力(楽器を落とさない程度)で楽器を持ち続けていて、
マウスピースが口に向かうために肘が曲がって腕全体のサポートがあって、
マウスピースが自分の口までやってくるんです。そしてそのおかげで音を出すことができます。

↑少し変わった言い回しに聞こえるかも知れませんが、あえて楽器を持ち上げる目的と動きの順番を明確にしています。



最後に補足として強調したいポイントは、
自分の口マウスピース持ってくるということです。
楽器を構える過程で、自分の顔を楽器のほうにやっているかもしれません。
すると顔(頭)が楽器にのしかかることになり、その重さは自分の手・腕で受け止めることになります。これは手や腕にかなり負担がかかります。持っている楽器にさらに重さが加わるので、手に力が入る(ぎゅっと強くにぎる)原因にもなりやすいです。
なので、自分の口マウスピース持ってきましょう。それがさきほど説明した腕の仕事なんですね。


それでも長時間演奏を続けていると、疲れてくるのは自然なことです。
そのときはしっかり休みましょう。演奏中でも、こまめに楽器を降ろして、腕を休ませましょうね!






森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ
トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

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