2013年8月14日水曜日

音を出すために必要な力

前回の記事《自分にとって謎だった「アンブシュア」がすっきり解決》の中でも少し触れましたが、バジルさんのレッスンの中で何度か出てきた「マウスピースを口につけて、口を閉じて、息を吐く」というアイデア。このアイデアをレッスンを受けながら実際にやってみた結果、自分が感じたり考えたこと。

これは、金管楽器で音をだすために必要なことをとてもシンプルに説明したアイデアだと思いました。
金管楽器で音を鳴らすために必要なことは、
1.マウスピースと唇が接着している
2.上下の唇が閉じてある
3.息が閉じてある唇を押し開ける
4.息によって押し開けられた唇が再び閉じる
後は、3と4の繰り返し・・・がバズィングとなっているわけですね。

では、実際に1から順番にやっていきます。

マウスピースを自分の唇にくっつける・・・
やってみようとすると、これがなかなかできないことに気づきました!
やりたいことはマウスピースを唇につける、ただそれだけ。
唇、口周辺は何もしなくていいのです。
けれどマウスピースが触れるちょっと前、いや、楽器を構え始めるとき、いや、吹くと決めた瞬間にも唇と口周辺で何かが起こりました。いわゆるアンブシュアを作ろうとする動きです。
意識的にやってるわけではありませんが、マウスピースが近づいてくるのに反応して、またはこれから吹こうとする音を吹いているときの感覚を再現しようとして、口が少し強張るのを感じました。


しかし、これからすることは、マウスピースを唇にくっつけるだけ。
意識してやると簡単にできますね。でも新鮮な感覚でした笑
バジルさんの提案で、マウスピースを唇につけたまま適当にしゃべってみる。

これまた新鮮!でもいつもマウスピースが触れるときに起こるアンブシュアを作ろうと唇を強張らせることは必要ないのかも、と思える実験でした。


さあ、マウスピースを唇にただつけることができたら、次は口を閉じる。
ぎゅっと固めるのではなく、上下の唇を閉じ合わせる感じですね。

そしたら「息を吐いて!」ってなるのですが、これがどうにも不安でなりません。
口を閉じた状態で音が鳴るの??って疑っていました。
何回かそんな疑問を持ちながら息を吐いてみるけど、なかなか音が出ない。
とりあえずバジルさんのことを信用して笑、思いっきり息を吐いてみると、音が出ました!
周りで聞いていた方からは、音が伸びやかになった!とフィードバックを頂きました。


バジルさんからの質問がきっかけで、自分自身への問いかけが始まりました。
バジルさん「力を使うことを恐れていない?」

その通りでした。
いい音を出すために、体の力を抜こうとしていました。リラックスさせようと。
大学のときに、すごく力んで吹いてて、音程は上ずるし、音色は固くなるし、タンギングはつぶれるし、それらをよくしたくて、脱力しようとしていました。
力で吹くこと=悪いことってイメージをなんとなく持っていました。

でも実際にほんとに力を抜いて吹くと、吹けないんですね。でも力入れちゃいけない、抜かなきゃって思ってるから、混乱していました。


今回、「マウスピースを口につけて、口を閉じて、息を吐く」というアイデアをやってみて、音を出すためにどこにどれくらいの力が必要なのか、少し理解できました。
閉じてある唇を押し開ける息の力は、自分が思っていたよりも使う必要がありました。
そして息の力はどこが担っているかというと、主に腹筋や骨盤底筋群なんだと。
骨盤底の方は感じることが難しいですが、腹筋はかなり活発に働くようになってなかなか大変でした!でもお腹を使って吹くっていうのはこういうことなのか!ばっちり力使ってるやんって実感しました。そして息の力だけだと、唇はどんどん開いていっちゃうので、口を閉じ続ける力も必要。


高い音を出すためには、より口を閉じる力が必要で、それを押し開ける息の力も強くなります。
閉じ加減やそれに伴う息の強さは変わるけど、低い音を吹くときにも同じように、口を閉じる力とそれを押し開ける息の力は必要なんだと感じました。

余分な力を抜く、というのを、必要なとこにに力を使うに置き換えることができますね!
これからのアプローチが変わってきます♪


最後に「息の力で閉じてある唇を押し開ける」ことに関連して、バジルさんのクリニックのなかでこんな話がありました。

アンブシュアという言葉は、フランス語で「河口」を意味する言葉なんだそうです。
河口といえば、川の水の流れによって、周りの土地が削られて、河口の地形を形成していますね。
金管楽器のアンブシュアも、息が唇を押し開けた結果生まれるもので、アンブシュアの形を決めるのは「どんな息を吐いているか」で決まるそうです。
この話を聞いて、バジルさんのこのアイデアに、さらに説得力を感じました。







森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
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2013年8月13日火曜日

自分にとって謎だった「アンブシュア」がすっきり解決!

8月5日~8日にかけて、宝塚歌劇オーケストラトロンボーン奏者であり、僕の母校大阪音楽大学の講師をされている山下浩生先生主催の合宿が行われました。今回はゲスト講師として、アレクサンダーテクニーク教師のバジルクリッツァーさんのクリニックも開催され、両先生のレッスンをたっぷりと受講できるとても充実した合宿でした!

これから、合宿で学んだことをいくつかに分けて紹介していきたいと思います。

今回は、僕が個人的にとっても混乱してずっと悩んできたアンブシュアについて。
今までの考え方ががらりと変わりました・・・

では、アンブシュアについてどんなことを悩んでいたのかというと、
1.楽器を吹くときに左の頬がふくらむこと
2.マウスピースと唇がくっつく場所が左に寄っていること

大学に入ってから特に気になり始めて、なんとかこの二つを直さなきゃいけない。
直さないと上手くなれないんじゃないかという不安が常にありました。
実際にレッスンしてくださった先生方からも「膨らまさない方がいいよ」とアドバイスをもらっていたし、自分自身その方が息がストレートに楽器に入るんだからそうしなきゃいけないと思っていました。

しかし、アンブシュアというのは、悩みだしたらきりがないほど、様々な情報がありますね!
口を横に引いて、口を横に引いてはいけない、アンブシュアは中央に寄せて、唇はリラックスさせて、息で吹いて、唇で吹かないで、ほっぺたは膨らまないように、ほっぺた膨らむくらいたくさん息つかって、プレスしてはいけない、プレスは必要、などなど、これらは僕が実際に教わったことや当時調べて得た情報の一部です。
何が良くて何が悪いか、ではなく、これだけたくさんの情報があれば混乱してしまうのも無理ないですね。
もちろんこれらの情報が一度にいっぺんに入ってきたわけではありません。

今まで新しく得た情報をたよりに新しいアンブシュアをひたすら試して体に覚えさせようとしていました。
なぜその新しいやり方を身につけようとしたかについては、理由があります。
そのやり方を教えてもらって、試してみたその場面、その瞬間では、けっこう上手くいったからです。けれど僕は、アンブシュアについて「固定的な型」として捉えていました。そしてどんないかなるときでも、その同じ口の形で吹かなきゃいけないんだという考えがかなり根本的なレベルであったんです。それこそが安定したアンブシュアだと思っていました。


けれどその考えで、新しいアンブシュアを身につけようと、練習すればするほど音が出にくくなって、曲が吹けなくなっていったのでした。
そんな中、やはり演奏会で演奏する機会もあるわけで、その時だけはとにかく音が鳴るやり方で吹いていましたが、自分に課したアンブシュアのルールを破ったことの罪悪感を感じたり、演奏中にアンブシュアに関して「やってはいけないこと」がたびたび頭をよぎるようになったのです。
そこからアンブシュアについては迷宮入りになってしまっていました。

なのでここのところ、アンブシュアについて考えることはほとんど放棄していたのですが、
今回両先生のレッスンを受講することで、アンブシュアについての意識がまるで変わりました!!



合宿初日、山下先生のレッスンにて
練習曲を演奏しました。山下先生はぼくがアレクサンダーの勉強をしていることもご存知で、
話は体の使い方や演奏するために何を考えているかという話題に。
頬が膨らんでいることも話題にあがりました。
僕の演奏に対して、先生のフィードバックは、「必要な力(圧力)を頬にたまった空気の圧力で補っているように見える」というようなものでした。そして頬が膨らむのは「頬が演奏に参加していないから」なのかもしれないと。
たしかにそうかもしれない。前は頬が膨らまないようにほっぺを固くしようとしてて、それじゃあどうにも演奏どころじゃなくなってしまうから、あきらめて放棄していました。
だから頬も演奏に参加させるというのは、とても魅力的なお言葉でした。
そして、確かに必要な圧力を頬に溜まった息の圧力で補っていた感がありました。

次の日、実際に頬も演奏に参加しているという意識で楽器を吹くと、頬の膨らみが減って、それによって唇が外にに引っ張られることも少なくなったのでかなり楽になりました。


そんな二日目、バジルさんのレッスン
お昼過ぎにバジルさん到着。全体のクリニックは三日目に予定されていたので、この日はバジルさんが合宿場をぶらぶらするので質問したい人はなんでも聞いていいよ、という時間に。

そこで、他の方がレッスンしてもらっているときに、「マウスピースを口につけて、口を閉じて、さあ息吐いて!」というアイデアが出ました。
これ、バジルさんのブログの中でもよく出てくる話なんですが、よくわからないままでいました。
「口閉じちゃって音鳴るの?」って。
でもそのレッスンを受けてる方は、そのアイデアで吹いてみると音がまるで変わった!!響きがまして伸びやかになっていました。想像してた結果とはまるで逆・・・笑

これはぜひ自分でもやってみたいと、まずマウスピースをくっつけてみるんだけどこの時点で、すごく心地悪い。それで吹いてみても上手く音がでない・・・
それを見ていたバジルさんが「森岡くんは唇の左側にもマウスピースをプレスしてみたら?」という提案をくださいました。
やってみるとかなり違和感あるけど。今まで感じたことがないくらいすごくフィットした感覚で、すごく簡単に音が出た。
そこでバジルさんが「アンブシュアを真ん中にしようとしていない?」と。

そうなんです!だってそれが正しいアンブシュアと思っていたから!
本来真ん中であるべきものが自分は左にずれちゃってるんだって。
そう教えられたしそう信じてた。
で、常にそこまで意識してるわけじゃないんだけど、ほとんど無意識にマウスピースを口につけてから真ん中にずらそうとしたり、真ん中側にだけプレスをしていたんです。

つまりマウスピースの右側は唇とくっついていて、左側はあまりくっついていない状態。
左の頬が膨らむ原因もここにあるようでした。

今回バジルさんが新たな角度から教えてくれたのは「左よりなのが森岡君の自然なアンブシュアなのかもしれない」ということ。
この考え、なかったです。やはり真ん中が絶対に正しくて、ほんとは真ん中がいいんだけど左寄りでしか吹けない自分に後ろめたさがありました。

今回の両先生のレッスンで、
・ほっぺたは膨らませちゃいけない→どうしても膨らんじゃう→ほっぺたのことは放棄!
・左に寄ってしまったアンブシュアをほんとは真ん中にしなくちゃいけない

と考えていたのが、

・ほっぺたも演奏に参加させる
・僕のアンブシュアは左よりが自然。左側にも十分プレスしてあげよう

とても建設的な考え方になりました!!
ほんとにもう「悩み」を通りこして「謎」な領域だったんですがとてもすっきりしました。

次回は「マウスピースを口にくっつけて、口閉じて、息を吐く!」のアイデアで吹いてみると音がどんな風に変化したか。閉じてから息を吐くというのはどういうことなのか、まとめたいと思います♪



森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
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